くうちゅうくらげ

-A Boys Named No.28-

らヴ。

「絶対に覚えている」そう云ったことは確かに覚えているのだが、いつどこで何のためにそう云ったのかは全く覚えていない。ただ、誰に云ったのかは覚えている。本日の午後、そのくらい曖昧な回想。

 

雪かきをサボった青年たちの店の前では路面が凍結し、僕はかつて誰かに称された「ペンギン歩き」をしてみせるのである。ひとりで。どこまでもひとりで。

 

数々のさよならを思い出している。思い出せないたくさんの感情。僕の見てきた数々の景色。いつもの喫茶店で、いつものコーヒーで、それらをすべて飲み込んでから、家に帰ろう。

 

僕はピアノが好きだった。もしかしたら今もこれからも。それ以外に僕自身を僕自身で語れる方法はない。そして僕の父さんは云う。「音楽が心に響くのは壊れ始めている時だ」って。僕は云う。「だけど、あのころは綺麗だった」って。