くうちゅうくらげ

-A Boys Named No.28-

僕は…。

“電車に乗ってる”

高田馬場→本川越 本川越→新井薬師前 新井薬師前→本川越 本川越→小平 小平→本川越 本川越→田無 一体いつになったら帰れるんだろう…。
そんなわけで今田無からの帰途。今度は寝ないようにこうして日記を書いてる。

“感傷に浸っている”

たった今、車窓に光が滲んだ。叶わない願い事をして、一方通行の道、一つの考え方しかない心。目を開いて遥か彼方から眩惑するような光を見るんだ。このまぶしい光にいつも目がくらんだ。

“手紙の内容を考えてる”

帰ったら、どんなことをしよう。ずっと返事を書いていなかった、父さんに手紙を書くのもいい。本文はこうしよう。

『親愛なる父さん、音信不通にしてたけど手紙を書きます。あなたはすっかりクリーンになって、新しい女性に出会い、いろんなことがうまくいってると聞いてます。父さんが残していったローリングスのグローブは、昔の感情を甦らせます、我が父と同じように、今、息子も洪水の中で溺れかけているんです。』そうだな、そんな内容にしよう…

“この数年間のことを考えてる”

自分のした正しいことや間違ったこと。僕はいつだって戻るに戻れないことをしてきた。いつも戻るに戻れないことをしている。

無駄にした夜のお陰で終わりの無い日々を乗り越えることができた。素晴らしい1日をずっと待っていた。長い間ずっと我慢してた。誰かに何かを言うのがずっとつらかった。たまに思うんだ。『誰かの言葉という雪に僕は埋もれてしまうんじゃないか』って。目を開いてみれば、こんなにいい天気なのに。いつもボンヤリしてた。どうでもよかった…。どうでもよかったんだよ…。

“心の中で子供に問いかけてる”

小さな子供が乗ってきた。
さあ 僕の隣に座りなよ。おばあちゃんがいれるみたいに自分でお茶を注いでやることはできないけど。僕も子供の頃を振り返ってみる。悪くもなければ素晴らしくもなかった時代を。考えれば、僕たちが夜が怖くて眠ることもできなかった頃はいろんなことがもっと良かった。だけどあれっきり…二度とあんな思いをしたことはない。僕は棲み家を後にした。その話をさせてくれよ。

昔は僕も小さな少年だった。いっぱしの大人気取りだった。初めて人生について考えた時を覚えている。きっといつか誰かが僕のドアをノックしてくるだろうと思ってた。そしてふたりで白い光の中へ…。いや、実際にそれはなかった。僕は何を知っていたんだろう。よくわからずにいた何か。やりかけだった何か。今では忘れている何か。ほとんど何もわかってなかったくせに。ちょうど君くらいの頃。子供時代が終わる時は競争が激しくて…。ほら あの空に果てなどないだろ。まだ君には計り知れないもの…。

“昔を思い返している”

制服姿の男子高校生が乗ってきた。
君と同じ頃の年の時、木曜日の夜遅くに一つ曲を作ろうと思った。みんな寝てたけどテレビはついてた。学校をサボって寝っ転んでいたって、何も変わっちゃいない。離れていくのは輝かしい人生と新しい友達だけ。だけどみんながいなくなった時、自分が頑張らないといけないことに気づいたんだ。今でも悔い改める気持ちならわかってるつもりだよ。だってまだ許されたいことには事欠かないから。僕は人生で許される以上のものが欲しかった。

“親友に話すべきだったことを考えている”

ふとわけもなく親友のことを考えた。

君が僕に悩みを相談するたびに時々思ってたけど君の方が僕より幸せだよ日々が煮詰まってきたら君には見えるようになるだろういずれにしろ君が行こうとしてるのは僕の行く場所よりもっといいところ僕は親友の君に、自分が感じるものすべてを告白したとは思わない昔は一緒に希望を夜明けに向けて絶対にこのままじゃ終われない。と確信していたよな。そんな瞬間も消えていく。今考えれば僕たちはここまでよく走ったよ。

“家に帰れずにいる”

反省。いつになったら家に帰れるんだろうか?いつか帰る家が見つかるんだろうか?