くうちゅうくらげ

-A Boys Named No.28-

マイバースデー。

“かくれんぼをする子供たち、振り返れど逆光、あるがままに生きようとする懐かしい夢、ドレスアップしたけど行くところはなくて、1人きりで楽しもうと思う。”-2010/1/28”

今日は俺の生誕21周年を記念する日、つまり俺のハッピーバースデーである。
俺はこの日の為にある計画を暖めていた、その計画とは【セルフハッピーバースデー計画】である。

その計画の全貌はこうだ。

プロローグ、朝早く起床する。
計画1、誰かに買って貰ったと思い込みプレゼントをセルフで購入する。
計画2、誰かと一緒にいると思い込み、セルフで高級レストランで食事を取る。
計画3、誰かに作ってもらったと思い込み、セルフで誕生日ケーキを手作りする。
エンディング、誰かと飲んでいると思い込み、酒を飲み深々と今日を振り返り、ハッピーバースデーの歌を歌い、そして就寝する。

実際に試してみた。

まずプロローグ
【朝早く起床する】

起床時間…
13時
失敗である。

早速幸先の悪いスタートを切った俺だが、終わりよければ総て良しと云われる世の中なだけに希望を捨てずに生きていこうと思う。

計画1、【誰かに買って貰ったと思い込みプレゼントをセルフで購入する】

さて、起床時間を大幅にミスってしまった為、都内に出ることは諦め、地元を散策しようと思う。
俺が俺にプレゼントしたものは実に興味深い逸品である。

【電気おでん鍋セット】

これは卓上でおでんが調理から保温まで出来、お手入れも楽々なフッ素樹脂加工仕様で、おたまや菜ばしもセットになっている優れものである。(説明書参照)
何故これにしたのかは定かではないが、つまり俺の21年の集大成はおでんと云うことになろう。

しかしここで重大な事実に気付く。
本来の目的は【誰かに買って貰ったと思い込みプレゼントをセルフで購入する】ことである。

“誰かに買って貰ったと思い込み”←これがポイント

つまりこの【電気おでん鍋セット】を誰かに買って貰ったと思い込まなくてはいけないのだ。
俺は誕生日に【電気おでん鍋セット】を買って貰ったことを頭の中で3度叩き込み、そう思い込んだ。

そして悩みに悩んだ結果。

こんなもの貰っても嬉しくない。という事実にたどり着いた。

むしろ、こんなもの貰ったと仮定したら非常に腹立たしい。

つまり計画1は失敗である。

この先使いもしないであろうものを買ってしまった(買ってもらった)俺だが、終わりよければ総て良しと云われる世の中なだけに、希望を捨てずに生きていこうと思う。

計画2、【誰かと一緒にいると思い込み、セルフで高級レストランで食事を取る】

まず、時間が微妙である。

重たい【電気おでん鍋セット】を持って帰りいざ出撃の準備が整ったのが16時半。

朝から何も食わずにいた俺は非常に腹をすかせていたが、さすがに16時半にやっている高級レストランというものは存在しない。

俺がこの日の為に入念に計画していたレストランの開店時間は実に11時〜16時の場所と18時〜23時という場所だった。

仕方なく、前々から入手していた情報を無に帰し、散策しようと思う。

見つけた店は知る人ぞ知る所沢の名店。
とらふぐ亭 所沢店。
である。

さてここで問題なのが先ほどと同じく

“誰かと一緒にいると思い込み”←これがポイント

つまり二人席を取らなくてはいけないわけである。

何度か考えた末、意を決して店に入る

「いらっしゃいませー 1名サマですか?」「…2名です」「お連れ様は後からいらっしゃいますか?」「…きません」「? 1名サマですか?」「…1名です」

負けた!!!
計画2は失敗である。

ムダにセット料理を頼みカウンター席で1人“ふぐ”という世にも奇妙な生命体を口に運び1人で店を後にする俺には哀愁が漂っていたことだろう。

全く恥ずかしい思いをした俺だが、終わりよければ総て良しと云われる世の中なだけに希望を捨てずに生きていこうと思う。

計画3、【誰かに作ってもらったと思い込み、セルフで誕生日ケーキを手作りする】

実は前々から楽しみにしていた計画の一つである。

材料をSEIYUで買い込み帰宅。

いざ料理開始。

説明書によると、【スポンジを焼く】これが難関らしい。

不器用ながら作業を終え、いざ焼きますぜ〜というときに気付く。家にオーブンがない。

気付くべきだったぁぁぁ。

仕方なくフライパンでチャレンジ。なんとなく形のみでき、その上にホイップ・生クリーム・イチゴ。見た目のみ完璧である。
試食。

うん、まずい。というかこれは食えない。人の食うものじゃない。

さすがにこれに至っては自分で汗水たらして苦労したせいか、“誰かに作ってもらったと思い込み”がまず無理だったのもあり、計画3は失敗である。

段々と暗雲の様相を呈している俺だが、終わりよければ総て良しと云われる世の中なだけに希望を捨てずに生きていこうと思う。

エンディング、【誰かと飲んでいると思い込み、酒を飲み深々と今日を振り返り、ハッピーバースデーの歌を歌い、そして就寝する】

まず酒を飲む時に

“誰かと飲んでいる”を思い込むのは相当ツライものがあった。

自らにひしひし伝わる孤独感を酒が更に煽り立て感涙以外の何者でもない。

つまりこの時点で失敗ではあるが最後までやり遂げようと思いハッピーバースデーの歌を口ずさんだ瞬間、俺の中の何かが目を覚ました。それは心の奥底でひしひしと伝わる、躍動感俺はこの気持ちを知っている。

これは
これは
怒りだ!!!

エンディングなんてどうだっていいよもう

俺は取り返しのつかない21周年を迎えてしまったのである。

そして今、唯一守れそうな計画は【就寝する】ということだけ。

最後まで結局ダメダメな俺だったが、
終わりよければ総て良しと云われる世の中なだけに
希望を捨てずに生きていこうと思う

しかし俺は今日の一連の流れから重要な真理を見つけ、
また進化を遂げた。

その真理とは

この虚しさを機に来年までにはさらに進化を遂げよう。

人生とは不思議なものだ。

寝る