くうちゅうくらげ

-A Boys Named No.28-

救われない男の物語。

熱波と疲労に参ってる。文章の書き方を忘れてしまった。今日は晴れてる、外に出たくない。でも行かなくちゃいけないときもある。うまい生き方を忘れてしまった。いや、それははじめから無かったものだから、好きなだけ持っていっていいよ。

そうだな。今日朝靄が立ち込める東京では。嘘や偽りを綺麗に纏った人々と。僅かに呻いていた風と。頭の中で焼け落ちる幻と。身に覚えのない情景と。甘やかしすぎていた夢と。いつも晴れない俺の空と。触れられるものと。そうじゃないものと。そうだね。今日はそんなことばっかり考えて。まぁそんな風に外を歩いた。

どこまでも青い空に白い煙を吐いて、馬鹿らしいほど汚れた生き様も持って、冒頭のシーンはいつもうまくいかない。俺はきっとわかっていたんだと思う。この考えで後悔しないで済んでいたんだとしたら、自分はこんなとこにはいないはずなんだってこと。そうだったな、気がつけばいつも君は泣きそうで、それでいて何処か綺麗で、とても悲しかった。

昨日は今日を生きる口実を作り忘れた。今日は明日を生きる口実を作らないと。悩んでいないかと聞かれて、悩んでいないと答える人は一体どんな生活をしてるんだろう。そうだな、こんなことも考えた。何にも悩んでいないと思っていた俺の友達も、それをただ外に見せないだけで、それをただ俺に見せないだけで、どこか悩んでいたのかもしれない。死にたかったのかもしれない。何か言ってくれてもいいよ。嘘でもいいよ。彼ら、次はどんな話をするの。きっと、俺達の中でベストな人だけが、悲惨な状況の中でも幸せを見つけることができるよ。いつだってこんなに晴れた蒼い空に救われて。あまりにも憎たらしい冷たい雨に救われて。その内に世界は晴れて。

今日は待ちに待ったピクニック。彼女は助手席に座らせて、仲良く話して、腕を組んで、共存できる言葉を願って、共有できるスペースを願って。だけど夜が来て、また朝がやってきて、晴れて、雲って、雨が降って、それでいつの日か、それらの残酷な繰り返しは、人の心を少しずつ変えてしまうんだろう。明日も彼女は彼を愛せているかわからない。そうだ、君が描いているその絵の綺麗な花、できたら俺に少し頂戴ね。いつか枯れていってしまう君の身代わりとして言葉だけで永遠を誓ってもいいね。そんなことをした人もいたね。

でも俺はひとり。不純な動機で近づいて、純粋な行動に傷ついて、単純な営為に気付いて、いま俺はひとり。黙ったまま見送るよ。それを愛と呼ぶにはやっぱり、どうしても救われない気がしてるんだ。たとえば終わりたいと思って、高い建物の上なんかに行って、そこで何か決心しても、世界を変えれるかい?何かを願う感情がいくら足りても、この風を止められるかい?それと同じで、朝靄が立ち込める東京では、俺が差し出した手は空に届かない。

君の目に映る綺麗じゃない俺っていうのは、一生俺が纏っていなくちゃいけない君の魔法。強く生きようと決めた。だけど、そんなのもまたその内見失うから。いらないよ。それに今ここでちゃんと涙流せたからさ。それでいいよ。

もう10月だよ。早くしなきゃさ。秋、終わっちゃうよ。変わって、変わって、その内消えてしまう。俺は以前そんな感情に名前をつけた。今となっては何も意味はないけれど、相変わらず空は俺を指差して笑って、ほら、秋、終わっちゃうよ。季節の変化が美しいという人もいた。今となっては何も意味はないけれど。オトナになれば、そうすれば、全てを忘れることが出来ると思って、時の流れに身を任せて。ずっと何かに追われるように逃げてきたけど、なんだか消えそうにないよ、君。もういいんだよ。きっと何もおきないんだよ。

奇跡なんて、フィクションだよな。心とか、涙とか、現実とか、夢とか、君とか、全部フィクションだったらいいのにな。文章の書き方を忘れてしまった。わかったよ。ありがとう。さようなら。そう云いたいけど。きっと、まだ、俺は、頑張って今日も生きなきゃいけないんだろう。