くうちゅうくらげ

-A Boys Named No.28-

遠距離恋愛雑記3

大阪に行く日の前日。
行くことに一切の迷いはなかった。
だけど、Kには一切何も告げなかった。

思えば「友達と旅行に行く」という建前くらい云っておけば良かったのだろうか。
とにかく傷つけるのが怖かっただけなのだろう。
完全に、間違った、優しさだ。
何が正しいのかは、ことが起こるまでわからない。

とにかく俺は準備をして大阪に向かった。
朝早起きをして、決まっていた時間の新幹線に乗り、色々と考えながら向かった。

Sとの正式なアポイントメントは取れていなかった。
結局、何も出来ずにとんぼ帰りって可能性も十分にあった。
行けば行くんじゃなかったと思うかもしれなかった。
だけど、そう思うよりも行かない方がきっと後悔したんだろう。

到着するまでは緊張や後悔など色々な感情が渦巻いていたのだが、到着してそれはまた別のものに変わった。

やはり理由はどうあれ、違う街に来るというのは楽しいものだ。
その人が過ごす街の空気、情景。
そんなものを踏まえて人の営みが見える街だ。
大阪は、小学生の頃に家族で来たことがある。
だけどその時に見えたものとは絶対的に違った世界だった。

右も左もわからないまま俺は駅をおりた。
俺が予約したホテルの駅は新大阪から少し離れた天王寺という大都市だった。
食い倒れの近くだという情報がホテルから届いていたので、少しだけ楽しみにしていた。

外は寒い。
周りにはビジネススーツをまとったヒトが多い。

こんな目的でここに来ているのは自分だけなのではないだろうかと思った。
少なくとも俺の周りの全ての人が何かしらの目的を持ってこの街にきているのだろうと思った。
自分には今目的がない。

とりあえず、Sに連絡をすることにしたのだが携帯を開くとKからの連絡が入っていた。
Kの連絡は見てみぬフリをして、Sにだけ到着したという連絡をした。

俺は何をしたかったのだろうか。
もしここで何も起きなかったとき、俺は何事もなかったかのようにKに連絡をするのだろうか。

Sから返事がないので、新大阪からは動くことにした。
荷物も重いので、ホテルを探すつもりでいたのだ。
ただ俺は大事なことに気付く。
どう接続したら天王寺駅に着くのかわからない。

「もしここで何もなかったとき」のことを何一つも考えていなかったのだ。
何の自信や根拠があるのだろうか。
そのワリには、3泊4日という無駄な日数を確保していた。
今に始まったことではないのだが、とにかく自分の行動は自分でもよくわからなかった。

見慣れない左側通行のエスカレーターを通過して地下鉄へ向かい、天王寺へ。
ホテルが意外と綺麗で驚いた。
新幹線代を含めてこれで19800円だ。
いくら旅行シーズンじゃないにしても、非常に安価に感じた記憶がある。

ホテルに着いてもSから連絡は一向にないので、散策することにした。
時間は15時を回っていた。

街に出たは良いものの、何かしたいことがあるのかどうかはとても微妙だった。

東京にはなくて大阪にあるもの。
もちろん街の雰囲気は東京にはない。
だが食事、人間、ビル、何でもそうだが、絶対にいきたい場所ややりたい事はなかった。
旅行というのはそういうものなのだろうか。

そもそも、1人旅というのは好きなのだが、今回に至っては目的が全然違った。
そういう意味でも不思議だったのだ。

「何もする気が起きない」まま、Sの連絡を待っていたので何度も携帯を開いた。
特に連絡が来ていなかったので当て所もなくフラフラと街を彷徨っていたら既に時間が周っていた。
21時だ。

何故だろう、時間を把握した瞬間に一気に疲れが出てくるのは。
今日は休むことにしよう、と思いホテルに戻り、すぐに就寝した。
その日は割とすぐに寝てしまったのだと思う。

一瞬、何が起きたのかと思った。
窓は大きく、あまりも明るく、自分の普段見たことのない世界が広がっている。
たまに旅行なんかに行くと良く起こる光景だ。
「ここはどこだ」と。
すぐに把握したんだけどね。

2日目がやってきた。
自分は特に約束も何も無いままだった。
金曜日になっていたと思う。
「もしかしたら」の思いを込めて木・金・土・日にしたのは良く覚えている。

さて困った。
携帯を開いても肝心のSからは何の連絡も無い。
Kからは「昨日どうしたの」的な連絡が来ていた。
その時も風邪を引いたくらい云っておけば良かったのだろうか。
きっと何も云わなくてもどうせわかってくれるのだろうというKの優しさに甘えていただけなのだろうか。

ともかく予定がない。
行きたい場所もなかったのではないだろうか。
だがずっとぐーたらしているわけにはいかないので歩き出すことにした。

どうでも良いが蓄えはそれなりにあった。
特に何事もなく貯めてきただけなのだが、仕事ばかり繰り返してきたのだ。

買い物をすることにした。
しかし、どこの店に行っても東京で売っているものの方が良く感じた。
やはり洋服などを買うのは行きつけの店に限る。
事前情報が何もないので、こっちにしか無い店がわからない。
調べることも出来たのだが、携帯を開くたびに「別の思い」がよぎるのでそれどころではない。

どうしたものだろうか。
自分はとにかくここまで来た。
だが、何の意味があるのだろうか。
この時点でそれにかなり拍車がかかったいた。

途中でKに泣きつきたい気分にもなっただろうか。
友達でもいい。

せめて美味い店でも探すとしようか。
そして昼食はガイドに載っていた無駄に高い店で済ませた。
だがコーヒーだけが美味かったという記憶しかない。
今行ってもその店の名前は思い出せないだろう。

完全に異国に来てしまった気分になっていた。
本当にこれで良かったのだろうか。

夜になった。
明日は土曜日だ。

今頃職場では年末の追い込みで忙しくなっているところだろう。
俺が抜けたシフトは誰が埋めたのだろうか。
そんなことを思いながら今にも俺は泣き出しそうだったのを憶えている。

大阪湾に行った。
もう一度、Sに連絡をしようと決心をした。
どんな内容のものだったかは覚えていないが、とにかく俺は海に来ていた。
明日に何もないなら、何も無いのだ。

そしてここには友達も家族も恋人もいない。
1人暮らし決心して以来、俺は始めて孤独を感じたのではないのだろうか。

どうにしかしたい。
俺は焦りと絶望の間に埋もれていた。
思えば理想の境遇だっただろうか。
だって人はどん底に堕ちてからようやく信じ始めるわけだから。


なんか段々自動筆記に近づいてますので書き始めのときとのテンションにかなりの誤差が…
もし自分が自分じゃなかったらこの手のエントリも割と楽しいんじゃないか。
そう思ったのでここまでは書くことにした。
今日は眠いから終わり
というかこれ以上先は「書く」か「書かない」かよりも「書ける」か「書けない」かになるので
書かなかったらすいません