くうちゅうくらげ

-A Boys Named No.28-

嗚呼、誰か俺に幸せを。

ダメ人間化が進んでいる昨今。

俺は飲み会と冠のつく行事に関しては実に弱い
というか良い思い出が1つもない。
ちなみに知っている方も多いと思うが、俺は酒が飲めない
厳密に言うと飲めないわけではないのだが、実に弱い上に知る人ぞ知る酒乱である。(以前の会社でビール瓶で社長の頭を殴りリストラされたことがあるのだが誰も楽しくないのでここじゃ書かない)
それとは別にもたまに誘われた同級生の飲み会でも誘われたメンツに壮絶な下ネタを曝け出し「28くん(俺のこと)はそんな人だとは思わなかった」とドン引きされたり、
頭数で誘われた合コンでも自分以外の人間は全員お持ち帰りで自分は独り帰宅は当たり前
朝方に代々木上原駅で起床(ポリにさっぴかれるが全裸でその場で抗議)
シラフなのをいいことに上司に酔っ払いを押し付けられる
等など、数々のカッコよすぎて引かれるエピソードを持っている俺にとって、もう「飲み会」たるものは億劫すぎてしょーもないのだ。

さて、昨日は普段仕事に行く日なのに無駄に休みを取り、昼過ぎに起きても何もやることがなかったので、家にいるうさぎにエサの「カリカリ棒」を一個ずつあげながら「しぬ、しなない」と繰り返してたら、実に珍しく女友達のYから電話が来たので出てやることにした。
なんとYは今日ヒマらしく、久しぶりに飲みに行かないかということなので、俺は早速二つ返事でOKした。
俺は、なんて懲りないやつだ。

しかし実は生まれてこの方、女性から突然電話でお誘いを受けるなんてことははじめてだ。

しかもYとはかなり久々に会う。
Yはかなりの美人で学生時代も男子諸侯らからかなりの人気を集めていた人物だ。

俺は意気揚々と「ぞーさん、ぞーさん、おーはながながいのねー♪」(決して下ネタではない)と歌いながらヒゲを剃り、カッコつけることにした。
Yに恥をかかせることになってしまうかもしれないので楽しませないと、これは一世一代の大勝負なのだ、と思い、アメリカンジョーク集のサイトを丸暗記した。
それだけでは物足りないと思い、久々に会った時の第一印象が大事であるということから、「ペンネ・アラビアータ!」と意味の分からない言葉とともに満面の笑みを浮かべることを挨拶にすることを思い付いた。

待ち合わせは19時だったので18時には家を出ることにした。
いきがけの電車で頭の中で「ペンネ・アラビアータ、ペンネ・アラビアータ…」と必死に練習した。

いざ19時にYの待つA駅に到着したのだが肝心のYの姿が見当たらない
待ち合わせ場所でいくら探してもYが見当たらないので、電話することにした。

電話に出ない
いくらかけても電話に出ないのだ。

なんとここへ来てバックレなんてことも考えたのだが、さすがに寝坊とかだろと思い、近くの喫茶店で時間をつぶすことにした。

約30分後、ようやくYからの電話が来た。
「盛り上がっていて、連絡に気づかなかった!ごめんね、今Xって居酒屋にいるからそこに来てね!先に着いているから!」
というので、なんかおかしいと思いながらもYの説明をもとにXという居酒屋に向かった。
仮にも男と待ち合わせをして、「30分も待たせた挙句、先に着いてる」というのはどういうことなのだろう。

Xという居酒屋につき、Yの姿を探したのだが一向に見つからない
再びYに電話をして、所在の確認をすると、2階の座敷にいるとのこと。

早速2階に向かう俺なのだが、到着した途端「What's the hell!!!!」という心の叫びと共に俺の視界が賑やかになった。
なんとその場には総勢30人以上の男や女や♂や♀がいるではないか。
俺はあまりの失意に「ペンネ・アラビアータ」の挨拶を忘れた。

確かにYから電話を受けた時は「久しぶりに飲みに行かないか」と聞いただけで、別に2人でしんみりとデートがしたいなんてことは一言も聞いていなかった
だがこれほどの勘違いはなかろうか。
まさか宴会の頭数に呼ばれるとは全く思っていなかったのだ。
壮絶な勘違いである。

少なくとも俺自身はついのさっきまでうさぎに「しぬ、しなない」と繰り返してたような男だ。
全く大勢で盛り上がるテンションではない。
明らかにラーメンが食いたい腹なのにハンバーグが出てきた時のガッカリ加減にとても似ている

しかも知り合いがYだけという悲惨な状況ながら、この時点でYは見る影もないほどに酔っ払っていた
いったいぜんたいどういうことだ。

しかしながらそんな俺でもこんな日は飲まずにはいられない。
もう気持ちを入れ替えて飲んで暴れて逮捕されるしかない
俺には今日しかないのだ。(かなり間違っている)

とは思ったものの、隣にいる「リー」と名乗る男が完全にゲイだった。(人のふとももを執拗に触ってくる)
時間が過ぎれども過ぎれども俺の隣には「リー」以外誰も付かない。(話そうとすらしてくれない)
Yは酔っ払いすぎて俺がいるのかいないのかも把握していない
俺は、やり場のない視線を他の女性のほうに向けてみる。
それでも、誰も俺とは話してくれない。(別に目当てが女性を弄ることでもないし)
放置プレイである。
完全にローテンション。
そして、俺は初めて気が付いた。
俺は完全にこの場に望まれていない

結局、誰とも仲良くなれなかった俺は誘ってくれたYには申し訳なく、2時間も持たずに独りで店を後にすることにした
ちなみにYからの連絡はその後一切ない

どうも俺は幸せにはなれない運命らしい。
俺の存在価値とはなんだったのであろうか。

哀しい。

夏風や、知らぬメンツと、俺の価値〜

敬愛。