くうちゅうくらげ

-A Boys Named No.28-

光芒逭春雑記3 「学食」

3日目、中学部活の朝練の影響で早起きは慣れたものだとは思っていたが、部活は8月までだったのでそれから何ヶ月もブランクがあることを考えるに、朝は全く起きれない。
しかも、昨日は夜遅くまでゲームをしてしまったのだ。
結果的には親に叩き出されるように、また同じサイクルで学校へ。

到着するなり、サエキとナカイが話しかけてきた。

サ「昨日は本当にごめん、俺てっきり28くんが先に帰ったかと思って…」
俺「(俺は教室にずっといたぞ、確かに話しかけはしなかったが、と思いながらも)仕方ないよ、それに野球部はたくさんいるみたいだし、俺なんかがいっても戦力にならないよ」
サ「いやいや、28くんもきっと野球部に入れば戦力になると思うよ、今日こそは見にきてよ、それと昨日はマジごめんちゃい」
ナ「それが謝る態度か!28くん、今日こそは行くといいよ」
横からがサエキを突つきながら俺に話しかけてくる。
俺『(ナカイが俺に気を遣ってくれたんだなと思いつつも、俺が行っても本当に戦力にならないとい思ったので、)俺は、本当に使えないと思うから、野球頑張ってよ、サエキ君、ナカイさんもありがとう」

と云ったのだが、話の流れで、今日こそはサエキが野球部の見学に連れて行くことになってしまった。
まあ家に帰ってもゲームくらいしかやることないし、いいか、と思った。

ぐーたらと授業を聞きながら、昼休みを待った。
早起きすぎるせいで妙に腹が減るのが早い。
4時限目終了のチャイムがなると同時に俺は弁当を広げた。
…のだが、ヨシトが誘ってきた。

ヨ「今日こそは俺と学食に行こうよ」
俺「今日も弁当があるからいいよ、てか俺カネがないから、行ってていいよ」
ヨ「いやいや、カネがないならその弁当を持ってきなよ」

俺は驚いた。
何に驚いたって、俺は愚かにも学食はレストランのようなものだと思っていたからだ。
レストランで持込のメシを食っちゃいけないのと同様に、弁当持っていっちゃいけないものだと。
だから、似たようなことをヨシトに話したら、彼は笑いながら、
ヨ「なわけないでしょ、どんなの想像してんの」
と答えた。
確かに学食がどんな場所なのか、どうやってメシを食うのか、などなど、気になることは多々あったのでわくわくしながらついていくことにした。

学食は1階にある。
ヨシトがエレベーターに乗るので、一緒に乗った。
初エレベーターだったのだが、家にあるものと大差なく無意味にガッカリした記憶がある。

ヨシトについていくのだが、彼は本当に人気者だと実感した。
途中廊下ですれ違う生徒たちがほとんど彼のことを知っていて、話しかけたりちょっかい出してくるのだ。
俺も中学のときはそんな生活を送ってきたんだから、ヨシトが若干羨ましかった。

学食につくなり、
ヨ「28はメシあるからいいよね、俺はあっちで買ってくるから、少しこの席で待ってて」
と云われたので、学食を食べるスペースに座った。
やたらと広かった。
なので学食内を見渡してみたのだが、それは俺にとって実におかしな光景だった。

給食のおばちゃん風の人が数人いて、一番はじっこには山のように積まれたサンドイッチやパンなど。
「今日のメニュー」なる定食もの、ラーメンやうどんも存在し、なんと自販機まである。
値段はやっぱり安かった。
試しにヒトツ買ってみたかったが、財布には60円しかないので、自販機のジュースすら買えずにあきらめた。(ジュースは70円だった)
ヨシトが少し時間をかけて戻ってきた。
ヨ「あっちのほうに俺の友達がいるから、あっちにいこう」
俺「ていうか、俺がヨシトの友達とメシ食っていいの?」
ヨ「そんな細かいことは気にしないで、というか28は見た目によらず弱気だな」
そう云い、学食内ではなく、外を指差したのでついていく。

ヨシトが指差した場所は中庭のような場所で、校庭と呼ぶには少し狭すぎるだろうか。
とりあえず地面は赤と緑で色分けされていて、土とは云い難かった。
俺の通っていた幼稚園の地面を思い出させるつくりだった。
そこの隅で2人でメシを食っている人たちが、ヨシトの仲間だった。

ヨ「よーお前ら、わりぃわりぃ少しおくれちまった」

俺に話しかける様子とはかなり違う、かなり慣れた態度で友人に話しかけるヨシト。

ヨ「こいつ、クラス一緒の28っていうんだ、昨日一人でメシ食ってたから連れてきた」
俺「28っす、よろしくっす」

俺は面白いことも云えずにその場に座り込む。

「28くん!よろしく!」

一目でムードメーカー的存在だと気づいた、その男はシダと云った。
クラスは俺たちの隣、F組らしい。

シ「28くんは外部生ですよね、制服で一目でわかりますけど、、」
俺「あ、そうなんだよね、ここ一発で内部か外部かわかるから、俺みたいなのはちょっと慣れない感じだな」
シ「気にすることはないですよ、僕たちそういうので関係隔てたりしないですから、まあ中には、良く思ってない人もいるみたいですけど」
?「ま、お前は女子には好かれてねえけどな、デブ」

キツイ言葉を発したのは釣り目で一見松田龍平(これで合ってる?)に見違うほどのイケメンだった。
名はエイジという。

エ「こいついつもこんなバカな感じだけどよろしくな、28!」

いきなり呼び捨てにするあたり、何故か好感がもてた。

ヨ「エイジ、珍しいじゃん、今日は弁当なんだ?」
エ「彼女が作ってくれた」
ヨ「ほーやるねえ、ユーリちゃんとまだ付き合ってるんだ?」

ユーリちゃん、がエイジの彼女だということはわかった。

エ「28だって弁当じゃん、28も彼女に作ってもらったのか?」
俺「いや、俺は母親に…」
エ「28は彼女いないの?」
俺「いや、今はいないよ、ついこの間ふられちまって…」
ヨ「あーだから入学の日落ち込んでいたの?」
俺「落ち込んでいたつもりは、ないよ」
シ「いやあみなさんアツですねえ」
エ「お前は黙ってろ」
エ「どう?クラスとか学年でカワイイ子いた?」
俺「まだ全然周りを把握してないからわからないなあ、というか誰ともしゃべってないし…」
ヨ「28は意外とオクテぽいよね、中学でもそうだったの?」
俺「いや、そんなことはないよ、むしろ中学では遊んでたほうかなあ」
シ「そうは見えないですけどね」
エ「だから、お前は黙ってろって」
ヨ「確かに、黙っていたほうがいいなシダは」
シ「二人とも酷いですよー」

俺は入学してはじめて笑顔になると、付き合っていた彼女のことを思い出していた。
中学からの連れ合いのその子にはふられたばかりだった。
互いの高校生活もありき、俺の性格もありき、うまくいかなかったのだ。

エ「とりあえず、外部生の話だが、A組のxはかわいかった、C組のyは胸がでかかった、D組のzはありゃあ、ヤリマンだな」
ヨ「お前、まだ3日目なのになんでそんなに手を出してるんだよ、ユーリちゃんいるんだろ」
エ「勘だよ、勘、同じクラスなのはyだけだし、他はこれからこれから、ユーリは、まあ繋ぎかな」

C組のエイジは、学校でも有数のヤリ手ということで有名らしい。
話によると、ヨシトはエイジとシダとは中学2、3年の付き合いらしい。

そんな話を繰り返していると、休み時間終了のチャイムが鳴った。

帰り際に、俺ははじめて出来たその友達らしい存在に満面の笑みを浮かべながら、少し地元の郷愁に浸っていた。
ヨ「まあエイジもシダもあんな感じだけど、これから仲良くしていくといいよ、よほどの用事がない限り、俺たちああやってあそこでメシ食っているからさ」
俺にはとてもありがたい言葉だった。

後に話すところによると、シダは剣道部、エイジは帰宅部らしい。
ヨシトはテニス部だ。

この日も5、6時限を無難に終え(ほとんどオリエンテーションだったので)、放課後。

俺は野球部の見学に行く用事があったので昨日と同じように教室で待っていると、サエキが
サ「今日はちょっと先輩に頼まれごとがあって連れていけないから、すまん」
別に良かった。
俺には新しい(というか初の)友達が出来たのだ、それだけで十分であろう。
俺「大丈夫だよ、機会があればまた誘ってよ」
サ「ありがとう、明日は練習試合なんだ、俺は補欠だけど頑張ってくるわ」
俺「うん、頑張ってね」

気が付けば明日は土曜日だ。
翌日は土曜日だったのだが、私立校は土曜日も授業だ。
公立高校ではゆとりがあったために、これからは土曜も戦わなくちゃならん。
この1日が意外にキツイものだと気づくのは後になってからだったが。

その日も家に帰り、1日中ゲームをして終わった。
宿題はまだ出ていなかった。


無駄に続きます
ていうか面白くないですね