くうちゅうくらげ

-A Boys Named No.28-

光芒逭春雑記4 「仲間」

少し時は経って、5月に入った。
俺は相変わらずいやいやながらも朝はちゃんと起きて、学校に行っていた。
野球部にお邪魔することはなく、クラスの生徒とも会話とは云わないまでも、挨拶くらいはすることが出来るようになっていた。

学校では4月の終わりにはじめてのテストがあり、結果的に俺はそれなりの点数を持って帰った。

いつもどおり昼休みに中庭にいったのだが、エイジしかいなかった。
ヨシトとシダは成績が悪く、答案返却後の昼休みに教師に呼び出されていた。

「内部生は基本的に頭が悪い」
テスト前に、エイジに聞いたことだ。
それは、中学ではよほどのことがない限り高校にそのまま上がれるので、塾などに行っていない限りは外部から受験で入ってきたやつとは比較にならないということから。

それもそのはずで、4月のほとんどの授業は中学の復習みたいなものだった。
しかしながら俺はというと、中学時代もほとんど勉強をしていなかったこともあり、楽して入学した感がとてもあったのでそれですら難しいと感じ、テスト前はそれなりに勉強をしたので呼び出しは免れた。

エイジはおちゃらけた風に見えて、頭は良かった。
学力はクラスでも5番以内には入るらしい。
答案を見せてもらったが、俺とは段違いに頭がいい。
既に大学受験の勉強も始めているとのこと。
「将来、困るのは自分だからな」とエイジは良く話していた。

テストは中学までのそれとは違い、しっかりと答案を返却されるごとに、点数を云われるのが少し面白かった。
俺は無難な成績で70点以上がほとんどだが、90点はないといった感じ。
クラスで最も頭が良かったのは、学級委員のナカイだった。
大体のテストでトップで名前を呼ばれていた。

しかしながら、二人での昼食は、少し気まずい。
なぜならば、中学からエイジと仲の良いヨシトやシダがいないと、何をしゃべったらよいのかわからないのだ。
というのも、ヨシトら3人は昼食中に中学のエピソードや、俺の知らない女の子の話をして盛り上がるなど、内輪ネタが大半で、たまに居場所を失うことがあったからだ。
ヨシト、キダは俺に気を遣ってきてくれたのか、会話の中に所々「28のとこでも、そんなのなかった?」とか聞かれてくれるのだが、その中で一番俺を気にしないのが、エイジだった。
なので正直、中庭に来るタイミングをミスったか、とすら思っていた。
しかし、エイジはエイジなりに気を遣ってくれたのか。

エ「そういえば、28に、ユーリの話はしたっけ?」
俺「ユーリ?ああ、エイジの彼女のこと?」
エ「そうそう、ユーリはA組なんだけどさ、最近うまくいってないんだよね」
俺「へえ、何か原因でもあるの?」
エ「ユーリさ、お前のクラスのタカイと仲良いんだよ、それでちょっと疑ったら機嫌悪くしちゃってさ」
俺「タカイ…くん?俺は話したことないんだけど、確かにチャライ感じはするよな」

タカイというその男は、俺も入学してから数日で目が付くほどの女好きそうな男だった。
休み時間も学校のギャルっぽい女と話しまくっているイメージで、さらにギャル男のようなしゃべり方をし、まあ正直に云うとあまり好きではないタイプだった。
マトモに話したことは、1回もない。

俺「で、そのタカイくんと具体的に何をしていたの?」
エ「タカイと2人でカラオケに行ったってはなしを同じクラスのxに聞いてねー」
俺「そうなんだ、それで問い詰めた感じ?」
エ「いや、俺はタカイと全然仲良くないから、本当のところはわからないからさ、でもヤツならやりかねないじゃん?」
俺「俺も詳しくはわからないよ、でもいつも女子と話してるイメージなんだよね、彼は」
エ「それは俺も知ってる、ユーリに限ってあんなヤツに付き合うイメージはないんだが」
俺「そもそも俺、ユーリさん?だって良くわからないし…」
エ「そうだよな、お前はわからないよなー、今度ユーリ紹介するよ、明日一緒にここで昼飯でもどう?」
俺「俺はいいけど、ユーリさんには迷惑じゃない?」
エ「いちいち気にするなよ、それよりもお前彼女は作らないのか」
俺「いまその話は、しないでくれよー」
エ「あーわかったわかった」

そんなこんなでチャイムが鳴った。
人に云われたからか、それからクラスのタカイとユーリさんをチェックすることにしてみた。
タカイは同じクラスなので、わかりやすい。
よく見れば大してイケメンではないし、頭もよくなさそうだ。
他人が悪口というか、悪い方向に見れば、なんだかものすごく悪いやつに見えてくるものだ。
しかし、マトモに話したことはない。

放課後。
この日はエイジとヨシトと三人で夕飯を食って帰ることが決まっていた。
俺としては、高校はじめての友達とはじめてのメシとはじめての散策ということもあり、とても楽しみにしていた。

登校前に母親に6月の小遣いを前倒しして1000円先にくれ、と頼んでおいたほどだ。
(5月の小遣いは、中古ゲームに消えた)

俺の通っていた高校へは二つのルートがある。
ヒトツはJRでのルート。
もうヒトツは地下鉄でのルートだ。

俺は地下鉄で、ヨシトとエイジはJRでのルートだった。
地元が近いヨシトとエイジとは違い、俺は地元がとても遠いので、学校の近場で食事をすることにした。
JRのルートだ。

ヨ「いやあ、今日はこってり絞られたよ」
エ「お前成績悪すぎ」
ヨ「エイジ、なんだかんだ云って頭いいもんな、いいな恵まれたやつは」
エ「なにいってんだ、同じ高校だろうが」
ヨ「てか28もさりげなく良い点取ってるし、なんかやるせねーな」
俺「いや、ヨシトが頭悪いだけだと思う」
ヨ「んだとー、じゃあ頭の悪い俺に今日はメシを奢ってくれ」
俺「おれいま、1245円しかないから、出せない、帰れなくなる」
ヨ「エイジ、カネあんだろ、奢れよ」
エ「バイトしてるお前が奢れ、俺は男に金は使わない」
ヨ「ひでーなーお前ら、まあいいや、今日は俺の愚痴を聞いてくれ」

俺はわくわくしていた。
友達と繁華街を練り歩くのもきっと楽しいし、何よりもこいつらと一緒にいれば、俺の知らない話がどんどん出てくるのだ。
地元のやつとは確かに仲が良いが、やはり出てくる名前なども互いに知っている人なので、発展が少ない。

俺の地元とは程遠いとは云えども、彼らにとってはホームグラウンドと云っても過言ではないK町をうろつく。
マルxにいき、ゲーセンにいき、無駄にプリクラを撮り、メシはサイxリアに向かうことにした。

エ「それにしても、男だけでメシって微妙だな」
ヨ「いいじゃんよ、エイジは日曜はユーリちゃんとデートだろ?」
エ「いや、最近行ってない、タカイの件があるからな」
ヨ「タカイ?あーあの件まだ片付いてないの?」
エ「昼に28にも話したんだが、どうもユーリのやつ何か隠しているみたいなんだよな」
ヨ「まじで?あ、28も知ってるんだ、28にはどう見えた?」
俺「俺はタカイくんもユーリちゃんも知らないからなんともいえないよ」
ヨ「タカイはともかく、ユーリは召還できるだろ?おいエイジ」
エ「今はそんな気分じゃない」
ヨ「おいおい」
エ「明日昼休みに中庭に来いって云っておくから、みんなでメシ食おうぜ」
ヨ「シダは?」
エ「あいつもいていいよ、女の前でキョドるの面白いし」
ヨ「確かに、28もユーリちゃんに会えるしね?」
俺「そうだね、それは楽しみだよ」
ヨ「じゃあ明日は中庭集合な!エイジ、ユーリちゃんに問いただすの?」
エ「いや、それはない、そうしたらお前らが面倒だろ?」
俺「確かに、その展開はかなり面倒かも知らん」
ヨ「でもイチャイチャもするなよ?ふられた直後の28にはイタイもんね」
俺「だから、それはもういいって…」
エ「あ、もうこんな時間だが、28は帰れるのか?」

時間は19時を回っていたのだが、無理に大丈夫だと云い、会話を続けて、20時過ぎに帰った。

久しぶりに楽しかったのだ。

帰りは家が遠いせいで22時になっていた。
俺の今月の小遣いはほぼ無一文になったが、それよりも大事なワクワク感を手に入れた気がした。

そう、あの日が来るまでは。

無駄に長くなりそう
書いている最中、頭がくらくらしてきた
なんかあったらコメよろ

とりあえず要望があったのでここまでの人物ね

〜筆者〜

・28…俺、高校1年、男、出席番号は3、ひょろい、埼玉県T市に住んでいる、外部生

〜地元関係〜

・ケン…同級生、男、中学からの親友A、良く28が自宅に遊びに行く

〜高校関係〜

  • E組(28のクラス)-

・ヨシト…同級生、男、出席番号は4、刈り上げていてわりとイケメン、身長は高い、クラスの人気者、はじめて話しかけてきた、内部生
・サエキ…同級生、男、野球部、出席番号は後半のほう、ガタイがいい、身長は高い、内部生
・ナカイ…同級生、女、学級委員、内部生
・タカイ…同級生、男、チャラ男、ユーリと浮気疑惑、よく見れば大してイケメンではないし、頭もよくなさそうだ

  • その他-

・シダ…同級生、F組、デブ、中学2、3年はヨシトと同じクラスだった、ムードメーカー的存在、女にはモテないらしい、剣道部、内部生
・エイジ…同級生、C組、ヨシトの親友、中学2、3年はヨシトと同じクラスだった、松田龍平似、ユーリちゃんという彼女がいる、学校でも有数のヤリ手らしい、帰宅部、内部生
・ユーリ…同級生、女、A組、美人、内部生、エイジの彼女、タカイと浮気疑惑
・フジシマ…教師、男、世界史と日本史担当