くうちゅうくらげ

-A Boys Named No.28-

光芒逭春雑記6 「晴天紀行」

6月になった。
2004年6月だ。

ちょうどこの頃になると、小遣い1000円に段々と嫌気が差してきて、地元の寿司屋でバイトを始めた。
何故そこを選んだのかは憶えていない。

家からは2駅分あるその場所へは自転車で向かっていたのだが、線路沿いを進むその通勤路の途中には公園があり、時間にして20分ほど。
中学以来運動不足だった自分にとってはちょうど良いと思えるほどだった。

初めてのバイトでは色々と経験した。
思ったよりも女子が多いこと、アルバイトリーダーが怖いこと。
それと、同級生がたくさんいて、かなり助かったということ。
殆どが高校生で、大学生は数人、今考えてもかなり楽しいバイトだった。
(この辺で触れたSという女性もここのバイトの人です)

と同時に、日曜日はとあるボランティア団体の活動に参加する為の研修が始まっていた。

小学生をキャンプに連れて行く、地域振興のボランティアだ。
俺も小学生の時にそれに参加して、楽しい夏休みを過ごしたのだ。
なので、高校生になったことだし、今度は楽しませる方、ということで。
とはいっても、俺の目的は地域振興などではなく、親友のケンなどが参加するから、ということだった。

今更にはなったが、俺は中学2年の途中からギターを習っていた。
本格的にやろうとは思ってはいなかったものの、やはり技術がそれなりになるに連れて、大きなことをやらかしたいと思い始めるようになっていたのだ。
そのせいで、レッスンは週2から週3へ増えていた。

学校以外も段々と充実し始めて、ヒマな時間が極端になくなっていったのを境にバイトや遊びなどの寝不足が続き、俺は授業中に寝てしまうなど、典型的なぐーたら学生の一員となってしまったのだ。
朝かろうじて起きるものの、電車の中で睡眠、3、4時限目はほとんど居眠り、と行った状態だ。
もはやクラスの中でもかなり有名なぐーたら人間として認識されてしまっていて、逆にそれが取っ付き易いと感じさせたのか、以前よりも格段に話しかけられるようになっていた。
思えば、ごくごく普通の、高校生活だ。

ある日の金曜日、中庭にはエイジとヨシト、それにユーリとエミがいた。

エ「おー寝太郎」
俺「寝太郎じゃないよ、っていうかなんで知っているんだ、エイジ」
ヨ「俺が、28は毎日寝てるって報告しといた」
俺「余計なことすんなよー」
エ「何?4月とかはそんなんじゃなかったぽいのに、最近忙しいの?」
俺「実は地元でバイトはじめて、日曜も遊び呆けて眠いし、てか宿題とか全然出来ないよ」
エ「お前色々やりすぎだろ、しかもたださえ家遠いもんなー」
エミ「へー、28くんは、寝てばっかりなのね」
俺「うるさいなー、寝てるやつは他にもいるから大丈夫じゃないかなー、野球部のやつとかほとんど寝てるじゃん」
ヨ「まあ部活やってるやつはそれだけで少しはテストとかも免除されたりするからな」
俺「え?そうなの?」
エ「だから、帰宅部のお前はヤバイってわけ、ところで今週の日曜日はヒマ?」
俺「俺は忙しいよ、日曜はボランティアの演習があるんだ」
ヨ「そんなのうっちゃらかしてさー俺らと遊びにいこうぜ?」

休日の誘いというのはとても珍しい。
俺以外はほとんど部活をやっているし、そもそも俺は家が遠いので、学校帰りにメシなどに誘われることはあっても、休日にわざわざというのは今までなかったのだ。
せっかくの誘いなので、演習の方をなんとかして、こちらに参加することにした。
思えばこの日から何かを間違ったのかもしれない。

俺「いいよ、せっかくだし、それじゃ演習はなんとかしておくよ」
エ「珍しくノリがいいねー、んで、何処へ行く?」
俺「というか、参加者は誰なの?」
ヨ「ここにいる奴ら…じゃね?」
ユ「私とエミと、エイジとヨシトと28」
ヨ「ちょっと待て、そうすると男が1人余るから、ユーリ誰か誘っとけ」
ユ「OK、リクエストは?」
ヨ「カワイイコ」
俺「好きだねー」
ヨ「どうでもいいだろ、まあそんな感じでよろしくっ」

結果的に、日曜日にエイジ、ヨシト、エミ、ユーリ、アイ(ユーリの友達)と、都内は某所の遊園地に出かけることになった。

日曜日。
晴天だったことを今でも憶えている。
集合は学校から少し離れたx駅。

昼前の待ち合わせであったのにも関わらず、俺は他の皆よりもかなり早く起きただろう。
緊張は少しあったが、それよりもわくわくしていた。
少々後ろめたかったが、前日にケンに連絡をして、ボランティアの演習を断ることが出来たので、気分は既に上向きだ。

電車に乗って、目的地へ向かう。
そして、服装などには出来るだけ気を遣ったつもりだ。

x駅に到着すると、若干早くつきすぎたためか、誰もまだ着いていなかった。
近くの本屋で時間を潰して、到着を待つことにすると、エイジから着信が来た。

エイジとそのままマクドナルドで時間を潰すことになった。

エ「みんなそのうち到着するよ、つーかお前来るの早くね?」
俺「家が遠いからね、デカイ遅刻するか、早く来ちゃうか、どっちかなんだよ」
エ「高校じゃ中々わからないけど、お前中々面白い格好しているな」
俺「え?なんか変かな?自分では気付かないけど…」
エ「まあいいや、実は28に頼みごとがあってだな」

エイジの方から頼みごとなんて実に珍しい。
俺は耳を欹てた。

エ「やっぱり、あのユーリとタカイの件はマジらしいんだよ」
俺「え?あれって2人じゃなかったってこないだ言ってなかったっけ?」
エ「俺もそう思ってたんだけど、怪しいと思って、ヨシトを使ってエミに聞いてもらったんだよ」
俺「そしたら、なんだって?」
エ「定かではないけど、私は誘われてないって行ってたって、ユーリはいつもエミとつるんでいるから、エミがいないってことになるとかなり怪しいんだよ、他にもっと仲のいい女友達なんて聞いたことねえしな」
俺「ってことは、エミさんにも話していなかったってこと?」
エ「つまりそういうこと、だから尚更怪しいだろ?」
俺「それで…どうしようと思っているの?」
エ「さすがに今日こそは真相を突き止めようと思ってるんだよ」
俺「で、俺に頼みごとって何?」
エ「密かに探って見て欲しいんだよ」
俺「どういう風にやろうか?」
エ「まずはエミをなんとかして、エミに聞きださせるのが1番だとおもうから、お前とエミと隔離できるような状態にするのが先だな」
俺「それって余計怪しまれないかな?」
エ「まあ、大丈夫だろ、なんとかするから、なんとかしろ」

とにかく俺は云われるがままにすることにしてしまった。
そうこうしているうちに、ヨシトが来て、ほどなくして女子の3人も現れた。
エイジは何事もなかったように、それじゃあ行きますか、と云い、6人は遊園地へと消えた。

空が高く、6月の陽気だった。

無駄に続きます

ここまでの人物

〜筆者〜

・28…俺、男、出席番号は3、ひょろい、埼玉県T市に住んでいる、バイトを始めた、ボランティアに参加している

〜地元関係〜

・ケン…同級生、男、中学からの親友A、良く28が自宅に遊びに行く、ボランティアに参加している

〜高校関係〜

  • E組(28のクラス)-

・ヨシト…同級生、男、出席番号は4、刈り上げていてわりとイケメン、身長は高い、クラスの人気者、はじめて話しかけてきた、内部生
・サエキ…同級生、男、野球部、出席番号は後半のほう、ガタイがいい、身長は高い、内部生
・ナカイ…同級生、女、学級委員、内部生
・タカイ…同級生、男、チャラ男、ユーリと浮気疑惑、よく見れば大してイケメンではないし、頭もよくなさそうだ

  • その他-

・シダ…同級生、F組、デブ、中学2、3年はヨシトと同じクラスだった、ムードメーカー的存在、女にはモテないらしい、剣道部、内部生
・エイジ…同級生、C組、ヨシトの親友、中学2、3年はヨシトと同じクラスだった、松田龍平似、ユーリちゃんという彼女がいる、学校でも有数のヤリ手らしい、帰宅部、内部生
・ユーリ…同級生、女、A組、エイジの彼女、タカイと二人で浮気疑惑
・エミ…同級生、女、ユーリの友人、A組、背が低い、明るい、内部生
・ヨウコ…同級生、女、ユーリの友人、A組、暗そうな子、外部生
・アイ…同級生、女、ユーリの友人、F組、普通の子、内部生
・サイトウ…同級生、女、ユーリの友人、A組、内部生、ヨシト、エイジらと中学3年は同クラス
・フジシマ…教師、男、世界史と日本史担当