くうちゅうくらげ

-A Boys Named No.28-

送り火。

早く起きてしまったので、国立新美術館へ絵画を見に行った。どういう感情でその絵を描いたのかって事を想像してみたけれど、やはりそれはわからなかった。

人生の中で一度でいいから見てみたいものがわりとある。シロナガスクジラ、オーロラ、マヤ文明のなんとかって遺跡、四川の商店街、世界で一番大きな花、ライオンの交尾、疎遠になった友達...良く考えたら俺がこの先見れないものというのはどのくらいあるのだろう?数え切れない。そんな中で今日も同じメンツの同じ顔を見ながら仕事をしていたわけだ。

一体自分の周りにどのくらいの人が本心を隠しているのだろうということを想像していた。一度想像し始めると止まらないもので、今日は職場で1日中そんなことばかり考えていたものだ。

それらを見たとしても、別に何も無い。欲望だけが生きる望みなのだとしたら、望みは失わない方が健康的だ。夢を追い続けて叶わないまま死ぬというのが一番健康的なんだろう。良いことではない。

さて、そんなダークな気持ちを抱えながらも、割と俺も普通のしたり顔で仕事をしてきたんだと思う。もし今日俺と同じことを考えていた人が同じ場所にいたとしたら…ま、いたところで。

何故みんな幸せを追い求めているのにもかかわらず、自ら違う方向へ進むのだろう?俺もな。