くうちゅうくらげ

-A Boys Named No.28-

六本木ヒルズ クロス・ポイントにて。

職場の近くに「六本木ヒルズ クロス・ポイント」という、なんだかよくわからない建造物が建った。
数ヶ月前から工事をしていたので、またこの辺にビルが出来るのかあと思っていたのだが、六本木ヒルズの端くれが建ったとは驚きだ。
1階にはマクドがあり、2階にはマクドがあり、その上は通路になっている様子。
実際は中に入ったことがないのでわからない。

この間、19時出勤だったのだが、18時50分くらいに駅に到着した。
都営大江戸線の地底の深さを察するに、ダッシュしないと絶対に間に合わない。
なので、電車のドアが開くなり俺は猛ダッシュでエスカレーターを駆け上がり、猛ダッシュで職場のほうへ向かった。

信号を待っている暇はないので、無視してダッシュすること数分、その忌まわしき「六本木ヒルズ クロス・ポイント」で背の高いおっさんに引き止められた。
俺は一瞬、ポリに信号無視を注意されるのかと思い、立ち止まった。
それが大きな間違いであった。

その男、中国人で、その「クロス・ポイント」を背景に写真を撮ってほしいとのことだ。
俺は後3分以内で職場に着かないといけない。
その事情を説明するも、日本語が理解できないのかなんなのか知らないが、「ダイジョーブ、ダイジョーブ」と云い、一向に手を離してくれない。
これはどういうことなのか。

仕方がなく、写真1枚だけ撮るなら、と承諾。
もう遅刻しても仕方がないような感じだったが、俺はまだ間に合うと確信していた。
なぜならば、見た感じこの背の高いおっさん一人だったからだ。
そう思ったのも大きな間違いであった。

このおっさんは、マクドの前にあるデザインされた柱のような場所に一人でカッコつけて立ったと思いきや、なにやら手を振る合図をし、それから程なくしてマクドの中から数10人の中国人が出てきたのだ。
遅刻フラグ成立である。

おっさんのめちゃくちゃ不器用な日本語と中国語交じりの声を聞きながら、写真撮影をするも「はじっこのレディが写ってない」だの、「奥のばあちゃんもうちょっと前」など無駄なことを云い尽くし、カメラ片手に持った俺は脱出するに出来ない状態。
後々気づいたのだけど、たぶんこのおっさんはガイドだったのではないだろうか。

結局、おっさんの無駄なかっこつけなどにもつき合わされ、職場を目と鼻の先にしながら約20分の遅刻をした。

職場につくなり、上司に「中国人の観光写真を撮っていて遅刻しました」と云うと、「お前撮ってなくても遅刻だろ」と云われ、反論の余地もなく無駄に仕事を押し付けられたのは云うまでもない。

余談だが、帰りに職場近辺のカウンター式のうどん屋に行くと、店員の言葉がカタコトだった。(明確ではないが、アジア系の人)
カウンターに座っているのは、これまたアジア系の人3人ほどと数名の黒人。
客の話している言葉もやはりカタコトの日本語であった。
純粋な日本人はこの中で俺しかいないんじゃないか、日本なのにと疑問に思いつつ、俺はこの街が不思議で仕方なくなった。
そうしてこの記事を書き、また無駄に酒を呷りながら無駄な1日が過ぎ去ろうとしているのである。