くうちゅうくらげ

-A Boys Named No.28-

裏道のメモリー。

実家の裏の小道を通るに、少年は古いことを思い出す。幼馴染と並んで歩いた事もある、この小道だ。あの頃の俺が、本当に俺だと云うのなら。あの子が昔云っていた言葉を良く思い出す。「私たちは、それぞれの物語を生きている」確かに自分の過去こそファンタジーだ。曖昧な雨上がりが、俺の総てをも蒸発させてしまえばいいのに。

職場へつく。フォルダの中に誰が見ても、後輩Aのものだとわかるテキストフォルダ。いつもながらにキレがいい。それを指摘するに彼は、「28さんのテキストにも独特の味がありますよ」と。俺は微笑しながら、その手は書類の階段を一歩踏みあがる。席の下には捩れんばかりのコードの川。耳の裏からジョン・フルシアンテ、太古の英雄。そう、ここが俺の王国。居心地は良いが、いつまでもここにいちゃいけない気持ちにも嘘はつけない。

失くしたものを、取り戻そう。

そう呟いて、周囲を見回し、幻影を透過加工する。僭越ながら、いつものように同じ影が自分の周りをグルグル回った後。気がついたら時計の針は一周していた。そしてその横では、鮮明に洋酒のラベルが光っていた。