くうちゅうくらげ

-A Boys Named No.28-

俺たちは消えていく。

起きたら時計の針の指す方向が、南西から北東に変わっていた。俺は夢の海の中を、ただようくらげであり続けたい。いつか俺が自分の名前を、名も無きものしたときの様に、心も身体も凍りつかせたい。極寒の地で生まれたその少年の名前は、ナンバー28という、両親の夢の残骸だった。

どうやら、人生は有限らしい。どうやら、この世界には、正解はないらしい。どうやら、ここに正義はないらしい。どうやら、夜は明けぬらしい。良いんだよ、それで。いや、それで、良かった。

あなたたちが叫ぶように懇願している“幸せな何か”を探す旅に出たことがある。ヨーロッパから、アメリカ大陸。色々な場所へ行ったけれど、どこでも俺が感じることは同じだ。誰かと一緒に、肌の暖かさを分かち合っても。どこで何をしていても。感じることは、同じだった。

失くしてしまったものを取り戻そう。愛せなかったものを取り戻すんだ。

俺は自分に言い聞かせるためだけに、一度身にまとったコートを脱いでみることにした。結果?人生に永続性はなく、俺の心は微風だけで凍えそうだ。怖い、死ぬほどに。辛い、死ぬほどに。

俺たちが出会った瞬間から、俺たちの中に路ができた。俺たちは出会った瞬間に、未来が無いという時点で結ばれていたのに、急に未来のほうがこちらに割り込んできたわけだ。

憂鬱な空、浮かぶ雲。笑わないでくれ、消えるから。つまらないヤツだと、思われたくない。

小さく身震いをしてから、焼酎を空けるんだよ。今日も明日も、これからも。君がいてもいなくても、感じることは、変わらない。