くうちゅうくらげ

-A Boys Named No.28-

ただ、そのような世界でのくらげ。

言葉に対する“価値”というものを底上げしていきたいと、勝手に思ったくらげがそこいました。

「〜ですが、何か?かっこわらい」「なにそれおいしいの?かっこわらい」が随時、大嫌いです。
それを云う人が嫌いなのではなく、その言葉が随時、大嫌いなのです。

嫌いなものが増えるのはいやなことですね、って誰が云ったことなのかは覚えていませんが、まあ不健康であります。
不健康を糧に今日も起き上がることができましたが、もう少し優しい言葉で目覚めたかったものです。

そこでは今日も言葉が風のように流れていましたが、その風が突然竜巻となって、時には街や人を襲うことがあるそうです。
くらげは部外者ですから、遠目からそれについて言及することしかできませんが、もはやその価値すらも失ってしまったようにも思えます。
同じ土俵に上がれていないわけですからね。

「責任」が嫌いだから、「大人」が嫌いです。
とある街では、責任感を持ててはじめて大人になれるそうで、それはそれは大層重いものを背負ってきた人が素晴らしいのだとか。

それを背負わないと決めたときに「じゃあくらげは代わりにコレ持て」と云われて、哀しみという荷物を背負わされました。
何も持たずに徘徊して色々なものを見たいと思っていたのですが、中々上手くはいかないようです。
日々というのは残酷です。

総ての言葉にはやはり毒があります。
こちら側の世界でも、誰かが何か云うだけで、それはそれは。
そしてその毒はすぐに蔓延するものです。

フグ君の毒を、今日はキンメダイ君が持ってきました。
今日の深海は中々に賑やかでしたが、くらげ君には、またひとつ嫌いなものが増えてしまいました。

美味しいものが益獣で、不味いものが害獣な世界です。
美味しくないくらげは、ただここで駆除される日を、酒を飲みながら待ち望むばかりです。