くうちゅうくらげ

-A Boys Named No.28-

メモリアル。

相変わらず寒い。
ほとんど毎日が白に埋め尽くされたこの場所で、僕は何かをしています。

普段から深夜のPCデスクで悶々とキーボードとマウスを交互に動かしていた僕がこんな場所で何をしているかというと、いわゆる付き添いの付き添いというやつです。
親会社の社長が北海道在住の人であり、色々とあるようで、やってきたのです。

それにしても寒い。

札幌で小さな喫茶店を見つけました。
珈琲が本当においしくて、何度もおかわりをしたら眠れなくなりました。
インテリアと匂いが素敵な店で、小さなランプが光っていました。
時間はPM10時半。
僕はノートPCに向かって、残っている作業を片付けています。

少し遠出すると、空気が変わります。
普段から摩天楼に囲まれたネオンの深海で人工物相手に延々と愚痴を言い続ける日々の中で。
こういったまた違った刺激は、とても大事なものだと感じます。
そして願わくば、こういう刺激は短いほうがいいです。
だっていくら嫌ったって、僕の家はそこにあるのだから。

僕は非常に悔しいことに、好きなものたちに囲まれた生活をしています。
好きな声も好きな味も好きな景色も、ここにはあります。

日々、何かを考えながら街を歩きます。
白く染め上げられた住宅街を歩くと、犬に吠えられます。
驚いて見上げた赤い家のポストに郵便物が入っているのを見つけました。
塀は凍りつき、家の中にはきっと人が住んでいます。
それぞれを、生きている。
それだけで今はいいんです。
これは現在の僕がそう感じることだから。

明日というものは、いったい誰が保証してくれるのでしょうか。
積極的な愛情は、いったい誰が抱えているのでしょうか。
果てしなくゼロに近いものは、何に宿るでしょうか。

それは景色。
そして木々。
僕のこころの中に。

また一歩足を踏み出して、前に進みます。
それを繰り返して、“マイホーム”にたどり着くころには。
僕のこころも、誰かのこころも安らいでいますように、と。

それでは、寝ましょう。
今日は有意義な日が過ごせました。
良い夢を、見ましょう。
目覚めたらまた新しい僕が始まりますように。

そう願う、僕の平凡な1日。