くうちゅうくらげ

-A Boys Named No.28-

静寂を棄てないで。

喫茶店の真ん中でキャイキャイと話している連中を傍目で見ながら、いろいろと考えていた。
思えば、学生時代の頃からガーシュインショパンを筆頭に、列挙しようと思えば文庫3冊分必要なほどの洋楽を聴きながら、流行という影を追いかける同級生に対して「僕はお前らよりも大人なのだ!」と確信して生きてきたが、単純に云えば、僕は僕で、また別の形の若さを浪費していただけに過ぎないのだろうと思う。

なあ、別にいいんだよ。僕の言葉から良い部分を探そうとしなくたって。誰も味方になってくれはしないよ。

小さな女の子は言う。『終わりだなんて、言わないで』僕は云う。「もうそれは終わった」

散り往きそうな姿を見て―メタファーでしかないのかもしれないが、何処か似ていると思ったことがある。

真夏の35℃を超しそうなある日に、商店の二階にある部屋でドロドロに融けそうなアイスを食べながら、『そんなに泣くなよ』と云っていた彼は元気だろうか。

あれはいつの話だったか。プールの匂い、家路を彩るツツジの色、蒸し暑い夜中に光に群がる虫。そうやって君が置き忘れた傷跡に触れる度に、薄汚い血が騒ぐのさ。

夕暮れの公園で、振り向いて突然キスをした君に対して思う。きっと僕が“こうなってしまう”と君はわかっていたんじゃないか、と。夢は終わらなくてはならない、ってね。そうだったな、僕の口癖は君の口癖だ。僕の寂しさが、少しは君に響けば良いと思う。そうして今日もまた被害者を履き違えながら、愛の儚さについて語る。優しさだけじゃ伝わらない。

『全然大丈夫、むしろ歓迎』と云いながらも、、、友よ。何故、あんな眼で窓の外を眺めていたのだろうか。

そうだね、風は気紛れで、いつか僕のこともいとも簡単に消してしまうかもしれない。

朝日に照らされている洗濯物は、少し寂しそうだ。雨上がりの晴れた空の下、足音鳴り響く路を、独り、鬱々と、歩く。そして、喜びは泪を流し、僕は思い知らされる。僕たちは例外なく、死ぬのだと。

君とも後何秒間、一緒にいられるだろうか。