くうちゅうくらげ

-A Boys Named No.28-

陽の当たる大通りを、こんな風に散々歩き回って、いつか光の速さで飛んで行くんだ。

人がたくさんいる夢を見て、それだけで疲れてしまってね―

この間、とはいっても先週のことだけど、浦安市のアレに行ってきた。
僕が云うのも何だけど結構楽しかった。
それでも、僕ほど独りが似合っている人間も中々珍しいだろうと思った。
僕は二人になった瞬間に独りを望むのだ。
その根底にあるのはやはり、多かれ少なかれ僕の内部に含有されている毒が、いつの日かの君を苦しめることが明白だからである。
「だから、近くにいなくてもいいじゃないか、僕の為に泣いてくれればそれだけで」
僕がこの人生で露呈してきたものは“大した人間じゃないし、素晴らしくもなんともない”ということ。
カッコつけないで云うならば、「僕には背負いきれませんよ」ということに過ぎないのだろうが。
そうだね。
たとえば僕が死んだら、自分が嫌いだった世界を全て変えてみたいと願うよ。

家の目の前にある、老婆が一人で経営しているであろうクリーニング店が閉店するという情報を耳にしてから、どのくらいの時間が経っただろう。
何度か世話になったお店なので「閉店までに一度は」と思ってはいたが、今日ふと視線を上げてみたら中は暗く、見慣れた服にかかったビニールも、ガチャガチャ音をたてる古いレジも既になくなっていた。
僕は常に“遅すぎる”そういうことなのだろう。
大事な事があったはずなのに、ずっと思い出せない。
春の、今日のような天気の良い日に、君は北の地で天を睨んで綻ぶ。
友は拳を握って闘う。
ピエロは何処かの部屋の片隅で笑っている。
そしてくらげは、泣いている。