僕に持っていないものを、全て教えて欲しいんだ。

僕の人生にストーリー性などまるでないのに、僕は物語の主人公になったつもりでいる。マイワールドイズエブリシング。そう、文章だけで見たならば何不自由もないほどの透明感のある世界の中にいながら、幸せとは程遠い毎日だ。

そして目の前で大事なたった一つの命が消えそうになっている。

そこはかとなく続く日々で、僕が確信したのは、誰といても孤独なんだということ。そう思っていた。「そういう風に生きてきてしまって、これからもそうするしかない」ということ。だが“あちら側”に行きたいかと問われれば、断固拒否する。つまり僕は、なんだかんだ云っても、その中に答えを見つけ出し、その中で呼吸するのだろうと。これらは絶対に、誰からも奪われないものだからだ。僕が本当に云いたいこと、思いたいこと、信じたいことは、きっとどこかに埋もれている。それを拾い上げる度に謳歌するのだろう。僕はこのことを、ちゃんと君に伝えておくべきだった。

「昨日の僕は既に別人」と云っておきながら、やはり根底にあるものに揺るぎは無い。哀しみを宿さぬ人間の何処に美しさがあると云うのだろう。僕は楽しみに満ち溢れた人生よりも、哀しみに満ちた人生の方が良いと思っている。美しさという点で、哀愁に勝るものはない。それは他者との間には決して発生しないもの。よって、自分だけが理解できるもの。ひとりあそび、それでも良い。僕はそれを選んだ。きっと生まれた時にはそれを、選んでいたのだと思う。それをちゃんと君に伝えられていたら？

随分前からメタファーめいたものしか書いていない気がする。だけどいつしか僕はこの長い長いセンテンスの先に、答えがあると信じることにした。いや、答えじゃないな。第一に、自分で自分を認められることを。そしてあわよくば、君が僕を認めてくれることを。何処かで期待していたのかもしれない。僕に勇気をくれたのは誰だろう。君だろう？それは自分だけではないと思う。僕の言葉が君の心を打つ自信などないけれど。それでもやっぱり僕は僕と君の言葉の中に総てがあると信じる。きっとそれは僕に赦された唯一の愛だから。だけどその愛が今目の前で消えようとしてる。愛を知った人間が、僕の前から消えようとしている。とても、耐えられそうにない。

ねえ、僕は、今でも岬に臨む夕焼けの中に立ち上る潮騒を忘れられない。幼い頃に破った約束、苦しみ、そして、悲願。涙管に何ものかが溢れる度にあの頃の匂いを思い出すよ。その度に僕が確信せずにはいられないのは、君とはもう永くはないという実感が押し寄せているから。僕から君へ向けた片思いは多分これからも続く。そうだね、永遠というものは無いという事は知っているけれど、もし世界にたった一つだけその場所、その想いがあるとしたら、たったこれだけだろう。いつか、君から僕に向けた片思いはいつか無くなってしまうだろう。それでいい。それでもわがままな僕は最期に君の笑顔が見たいと思う。だけどそう云える時が来たとしたら、既に僕は僕じゃなくなってしまっているのかもしれないね。君に覚えておいて欲しいのは、僕だっていつまでも一緒にいられるように、僕なりに努力したんだってことだけだよ。だから君は君だけで戦うんじゃなくて、僕と一緒に頑張っていけるように、少し考えてほしかった。自分だけで終わりにしてしまうなんて残酷だよ。まだ伝えたいことがたくさんあるんだ。

だから、お願いだから目を覚ましてよ。