くうちゅうくらげ

-A Boys Named No.28-

辛いことを書きたいんだ。

嗚呼、今になって気付いたよ。
僕は不安なんだ。
将来のこと?いや、そうじゃない。
僕が不安なのは、この先どうなっちゃうのかっていうことなんだ。
それって将来のことだって?
違う。死ぬことでもない。
少なくとも僕の云う“将来”と君の言う“将来”は、その大半が違う。
云っていることがわからないって?そうだな。
どういう違いがあるのかといえば、歌うことと唄うこと。
謳うことと謡うことは違うということさ。
よくわからないって?ごめん、実の所、僕にもよくわからないんだ。
でも意味があると思うからやっているよ。

語彙の少なさを克服できたら、
このクソみたいにつまらない毎日を彩ることが出来るのになあ。
そうすれば、思い通りにはいかなくても、想い通りにはいくのになあ。
イメージをすれば僕の世界になる。
僕の世界での力は僕の言葉なんだ。
頼むからそう思わせてくれよ。
そうしたら、
このクソみたいにつまらない毎日を彩ることが出来るのになあ。
ところでパンクだとかグランジだとかオルタナティブは僕に何を残してくれたんだ?
まるで誇大妄想をこじらせてしまった子供の戯言に感じるかもしれないけれど、
何を考えていたって、誰を信じていたって、
車輪に刃をつけたチャリオットに追われたら悲鳴を上げる点では同じだろう。
子供の頃にみた将来に、現在の僕は立っている。
意味があると思いながら。

何故意味があると思うのかって?
それは、僕には聞いてくれる君がいて、君には云ってくれる僕がいるからさ。
いつまでもそういうものがあると思うなよって云いたいのかもしれないけど、そんなことは僕にだってわかってる。
僕は本当はわかってる。
云う事にも、謳う事にも、生きる事にも、本当は意味なんかないんだって。

でもさ、僕には云える事があって、謳う事もある。
そういった逆説で考えると、本当は生きる事に意味があるってことに繋がるんだ。
僕に必要なのは生きていく理由なんかじゃない。
愛すべき時に、愛するということだけなんだ。
まだ何を云っているかわからないって?いいんだよ。
僕のことは、僕にだけわかればさ。

いや、ちょっと待って。
頼むから。
意味がわからないと思っていても、愛想を尽かさず、最期まで聞いておくれ。
そうしたら正でも負でも、善でも悪でも。
もしかしたら、無でも。何かしらの感情を抱いてくれると思うんだ。

僕にはそのベイビィの涙を止められるだけの力はなかった。
嗚呼、言葉というものはなんて残酷なのだろうと一瞬思った。
そして次の瞬間にはそう思った自分が一番残酷だったと云う事に気付く訳だ。

大事にしてきたはずだった。
人を?いや、言葉を。言葉を?いや、ワードを。
ワード、記号を。結局他人じゃないよね?そうなんです。
僕はベストなタイミングにベストなワードを入れて、ベストな人間だと思いたかっただけだったんだ!

たまには、僕が本気で好きだった物事や、他人。
そういう人がいたんだってこと、今でも少なからずいるんだってことを、思い出して欲しい。
それでも僕はたぶん、愛してるを云えない。
僕はたぶん、ありがとうを云えない。
そして僕はたぶん、さようならすらも云えない。
いったいどうして、こうなんだろう。

僕は「期待が大きすぎた」と喚き、そのすぐ後に「期待されなかった」と叫ぶ。
「犬を食べるなんてかわいそうねえ」のすぐ後に昨夜その一家によって食われた豚について思う。

僕はきっとこんなものは書かなければ良かったと思うのだろうから、酒を飲んで忘れるよ。
そしてまた、思い出す。
だけどそのうち、こんなものは書かなければ良かったと思うことを割と幸せなことだと思い始めるだろう。

悲しむ顔が見たくなかったのだろうか、ただの照れ隠しだったのだろうか。
本当にそうなの?
憶病なのが優しいのでしょうか。
それなら優しさは憶病なのかな。
優しいから偽るのですか。
どちらにしたって僕は云うべき時に、何も言葉が見つけられなかったんだ。

これは君に云ってるんだよ。わかったかな、僕?
もし僕があと1000年生きるとしても、僕は僕を見つけられないと思う。
君以上のものだって見つけられないだろうから、絶対に後悔はしないよ。