くうちゅうくらげ

-A Boys Named No.28-

他人セット一式。

夕焼け間近の喫茶店でその女性は泣いていた。
誰にも気付かれていないフリをしながら。
そんな場所で泣いているのですから、誰にも気付かれないはずないだろう。
そんなとき僕は見ざる聞かざる言わざるの見ざるのポーズをしてユニークを気取っている。
僕にTATOOを彫ってくれた彼は、なあもしゼウスが出てきたらあの子の味方をすると思う、と僕に問う。
安心してくれ、ゼウスは今お前のマリアとお忍びでセックス中だからどちらの味方にもつかないだろう。
そんなショックな出来事も、人魚の珈琲がゆっくりと身体を癒すのだと思うと、無性にありがたい気持ちになってきた。
酒、煙草、珈琲、不眠、ジョーク、嘘、ほんとのこと、こういう全てが、こういう人生が僕をダメにしていく。

そんなことを考えていたら地下鉄を乗り過ごした。