くうちゅうくらげ

-A Boys Named No.28-

ものすごくどうでもいいこと。

姉を失った、「“she”としての“少女”」は良く頑張ったものだと思う。「なぜ仕事をやめたの」という問いに対して、僕は「誰も聴かないから」と答えた。そのときはこれほどベストな解答はあるまい、と思っていたけれど、良く考えたらまるで答えになっちゃいない。考え深げに「そっか」とだけ云った“she”はこれから「京都への道程」を辿るだろう。素敵なことだとは思うけど、いったい何を求めているのだろう。思い返して見つめてみると、背景にある牧場は何も変わってはいなかった。そのことが聊か不思議であったし、頭に来てもいた。なぜならば今の僕はガーシュインなどは聴かない。1,2年でいろいろと変わったものだと思うから。結局のところ僕は僕が居辛いと思うように他の人にも居辛いと思ってほしかっただけだったんだと思う。この世界に対して。

 

「遠方で失望する気持ちはもううんざりだからね」と、かつて僕は数えるのもイヤなくらい、生前の「“she”としての“少女”」に云ったものだ。ある日、『今日を生きられない僕ら』について熱弁していたことがあった。一人が「それが貴方の命取り」と云った。そこまではよく覚えている。そしてその後のことはほとんど覚えていない。僕の言葉のほとんどは偽りという優しさに還元されてしまったし、そういう意味ではもう誰の言葉も信じられないだろうと思っている。もちろん自分自身の言葉も。それはそれで仕方のないことだ。

 

<僕の高揚感は形を成す前に奪われる>

<まるではじめからそんなもの存在していなかったかのように>

そんな思いを抱えながら、というよりも自己陶酔という胸糞悪いものを抱えながら、喫茶店で一杯やるのである。

<空港の喫茶店でバウムを抱えた女>

<その喫茶店でクレープを焼いた女>

<目の前にいる従姉妹>

 

「俺は遠くに行くんだよ」そんな大事な部分を云い忘れたのはそっちのけで、僕はtravisなんぞを聴きながら、千歳空港から航路を辿っていた。