くうちゅうくらげ

-A Boys Named No.28-

根本から失いはじめるとき。

僕はいつもほとんどの人には関係のないことばかり考えているんだと思う。ほとんどの人が価値を感じないような事柄に価値を感じている。逆を云えば、ほとんどの人が価値を感じるような事柄に価値を感じていないということにもなる。誰も知らないことは、僕だけが持っているものだ。

 

とにかく、今日は酷くムカついた。

 

可愛い女の子に「どこ見てんのよ、バカ」と云われる夢を見て起きた。僕がいろいろと諦め始めたのはいつからだったろう。夏の終わり、生き残りのセミ達が寂しそうに笑う中、はじめての恋人が僕の知らないベッドで寝た時からだったっけ。過去の恋人とは最後にファミリーレストランで会った日に「同じことを考えていたら、絶対にいつかまた会える」と云ったことを覚えている。

 

ああ僕は鮮明に覚えている。感動的なセンテンスのわりには、感傷的な想いばかり残ってしまう。

ああ僕は鮮明に覚えている。そういうものが全て“哀しみ”に変わっていくんだって。

 

僕は哀しみ中毒で、哀しみがないと生きていけない。そしてそう考えること自体が哀しくて、そのうち収集がつかなくなっていく。積極的に哀しみを搾取して、消極的に哀しみを捨てていく。

 

ああ僕は鮮明に覚えている。確かに最期、あの日に「同じことを考えていたら、絶対にいつかまた会える」と云った。