くうちゅうくらげ

-A Boys Named No.28-

タンタン。

今日は暑くて暇で今にも死にそうでした。

こんなに暑い日は全裸で家で念仏を唱えて過ごすのが多分有意義というやつなんでしょうけど、僕はそんなに強くないのでまた無駄に外に出て1日を過ごした次第です。

 

さて、家の近くにはお気に入りのタンタン麺屋があります。

週に1回くらいはそこへ通う僕は、いつものように店に入り「白ゴマタンタン麺一つ!」と少年野球の坊主顔負けの元気の良さで注文しました。

 

昼時を少し過ぎた頃だったので客はまばらだったんですが、ほぼ同時に入ってきたおばちゃんがいました。

このおばちゃん、何故かなかなか注文しません。

メニューを見て、裏返し、深いため息をついてまたメニューを開く。

そして僕の白ゴマタンタン麺が到着し、ほぼ食い終わる頃になってもおばちゃんは注文しません。

僕が食い終わり水を嗜んでいる頃に、世界が霧に包まれるんじゃないかと思うほど大きなため息の後にようやく「白ゴマ一つ」と注文しました。

 

しかしそれにしても。

この店、サイドメニューに餃子やつまみが少々ある程度で、メインのラーメンは白ゴマか黒ゴマくらいしかありません。

某日高屋のように「タンタン麺」を頼んだのに何故か「カントン麺」が出て来るというミラクルもありません。

タンタン麺を食いたくないのにタンタン麺専門店に間違って入るというのも考えにくいです。

いったい何にそんなに悩んでいたのか。

黒か白か。

それだけを決める為に約20分も悩んでいたのか。

不思議で問いつめたくなりましたが、おばちゃんの鬼気迫る表情などを見ていたらここは即座に撤退するべきだと思い、店を後にしました。

 

僕はそれから喫茶店に行き、読書をしたり、これからの人生の事を考えたり、かわいい女の子を目で追ったりしてました。

女子高生が入ってくる時間帯になった時、「こいつらはいつもセックスしてるんだろうなぁ」と思うと無駄に羨ましくなってきたので、店を出ようとした矢先、僕の携帯が鳴りました。

 

自慢ではありませんが、僕の携帯は滅多に鳴りません。

常にマナーモードだから、とか、音を出る機能が壊れているから、とかだったらまだ救いようがあるのですが、ただ単純に僕とコンタクトを取りたいと思う人間がいないからというのが正確な理由です。

そろそろハリウッド映画デビューも間近で、全米の98%が期待を寄せていたりいなかったりするほどの男を放っておくなんて、本当に人間は愚かです。

 

で、携帯が鳴ったのでもの凄いスピードで開くと、名前も忘れていたような同級生のA子からのメールでした。

内容は「28くん、さっきxxっていう喫茶店にいたよね?声かけようと思ったけど、鬼気迫る感じだったのでやめましたぁ」とのこと。

 

「鬼気迫る?ファッ?」と思いました。

奴には、僕があのタンタン麺屋にいたおばちゃんのように映っていたというのでしょうか。

若干納得がいかなかったので文句やちんこの一つや二つくれてやっても良かったのですが、紳士である僕は「そんなことより俺と付き合おう!」と真摯たる対応をしましたが、照れすぎたのか返事が来ませんでした。

だめか、ちっ。

 

多分、僕は人のことをとやかく云える人間じゃないってことをそろそろ自覚したほうが良いのかもしれません。

 

心からなる憂慮はあり、懸念でもある。