くうちゅうくらげ

-A Boys Named No.28-

リビングデッド。

今日、フリーターをくすぶらせて約6年で、もう先がないんじゃないと疑われるほどどうしようもないが何故か女にはそこそこモテる同級生のKと鬱々と飲み屋で過ごしていました。

夕方の16時頃から語り、20時になろうというときにKの携帯が鳴りました。

なんでも僕とKの同級生である、女Sと女Yが近くの違う飲み屋で飲んでいるから合流しないか、とのこと。

僕は「お役御免、あとはご懐妊までがんばってください」と思い、席を立とうとするも、無駄に人の良いというかクソ人間のKは「28も、一緒に行こう」と無駄なことを云いやがったのでイケメンであるところの僕は渋ることなく一緒にいくことにしました。

 

実はSもYも学生時代はそこそこモテていた方です。

僕はというとそんな二人には話しかけても「話かけんな!」と罵倒されたり「こっち来んな!」と消しゴムを投げられたりするくらい、それなりに良い友好関係を築いてきたので、リラックスした形で臨めると思ってました。

もしかしたらKを差し置いて、ご懐妊までの役目は仕方なく僕が担うという状況も有り得ます。

 

そしてKの後に続いて、二人のいる飲み屋に行きました。

KはすぐさまSとYと見つけ「よっ!」と無駄に爽やかな笑顔で二人に声をかけました。

そしてSの第一声、それが「後ろにいるの、誰?Kの友達?」でした。

無駄に照れているのか、僕という事実を否定したいようでした。

Kがなんの淀みもなく「え?28だよ、同じクラスだったじゃん!」と無駄にご丁寧に説明しました。

ここでSやYが濡れてしまっても間違いないところだったのですが、僕はYの一言に正気を失いかけました。

 

「ええっ!28くんって死んだんじゃなかったの!?」

 

…。

いつのまに死んでいたのでしょうか、僕は。

確かに最近の生活といえば、暇はあっても金はない、鬱々とうさぎにエサをやって、死ぬか死なないかをしょっちゅう彷徨って、たまにバイトにいっては先輩(しかも年下)に怒られて、深夜に大声で歌って隣人に怪訝な扱いをされて、お気に入りのAV女優と右手に毎日慰められているものの、まあかろうじてギリギリ生きているつもりです。

もちろんこの状態のことを「死んでいる」というのならば、「なかなかいいところを突くね」と無駄に感心してしまうところで、否定はできないし仕方ないのでしょうけど、それにしたってかろうじて生きているつもりです。

それとも、自分では気がつかないけど、僕は死んでいるのでしょうか。

「いやいやいやいや」と否定してくれたKをよそ目に、そもそも僕が死んだというのはどこ情報なのかと疑いたくなります。

 

ともかく、夜遊びに夜遊びを重ねてきた人生です。

こんな甘っちょろい馬鹿女共に遅れを取るほど、会話が下手クソなわけじゃありません。

それにしても…、お世辞にもSとYの話はおもしろくありません。

Kも男二人の時は下ネタやブラックジョーク満載であり、寝ても冷めても面白い奴なんですが、女を前にすると全く使いものになりません。

Sの彼氏の愚痴を聞き、Yの仕事の辛さについての語りを聞き、時間だけが刻々と過ぎていきました。

SもYも照れているのか、僕についての話はいっさいしませんでした。

僕も最初は張り切って下ネタやこの時の為に必死に暗記したアメリカンジョークなんかを惜しみなく投下しましたが、面白すぎるのか全くスルー。

そしてSが今の彼氏との結婚を考えているだのなんだの話始めた時点で僕は気付き始めました。

 

「もしかしたら、俺は自分で気付かないうちにやっぱり死んでいたのかもしれない」と。

 

少なくとも僕はSとYの間では今まで死んでいたはずの男です。

この二人にとっては僕がすでに死んでいようが、今死のうが、あまり大差はないでしょう。

というか、死んでいたほうがマシだったんじゃないかとすら思わないでもないです。

 

そんなこんなで大して楽しめるはずもないので「明日は仕事で朝早いから」と嘘を付いて帰ってきました。

帰り際にKが無駄に「おまえしばらく仕事ないだろ」とほんと無駄に本当のことを云い始めたので焦りましたが、なんとかなりました。

 

つまらない気持ちで帰ってボンバーマンをやって、4面くらいでクリアできなくなったのでオナニーして寝ます。

理性は一つの道具に過ぎません。

 

みんななにが楽しくて生きてるんだろう。

ちっ。