くうちゅうくらげ

-A Boys Named No.28-

だめてきすと。

目が覚め、暗い空からロボットが降りてきて、そのロボットにアナルをものすごい勢いで攻められる。蜘蛛がうじゃうじゃ出て来て、最終的に、僕は名前も知らないような女にナイフで殺され、高い建物の上から落とされる。そんな夢を見てから起床した。どんな感慨もない。恐怖があるだけ。もう眠るのはやめよう。

 

そしてこれらは、文章であるが故に一定の温度や湿度、そして色彩を失う。

 

窓を開けて、今日も僕を中心に世界が回っていないことを確認してから、外へ出た。ビルの無い世界において、空と雲は本来の威力を発揮する。頭を真横にしてぐるぐる回っていたら目が回った。ぐるぐるぐーるぐる。

なんにせよ、僕は驚いた。何にって、空ってやつにこんなに感慨を持つ自分に。だいぶ昔に旅なんてものに感慨を失くしてしまったと思っていて。ずいぶん前に自分がこうなっている以上は何処にいたって同じなんだと思っていて。だからこそ。

 

「この空を君にあげるよ」『別にいらないよ』
「この雲、素敵だって思わない?」『あんまりそうは思わないかなぁ』
「そろそろ海が見たいね」『別に見たくないよ』
「美しい世界が、此処にもあるんだよ」『うるさいから黙っててくれない?』
「知ってるよ、でもこの感情を誰かに伝えたくてね」『相手がいないからってそういう迷惑やめてくれる?』
「わかったよ…もう何も云わないよ…」

 

いつしか、僕は僕の人生を語り尽くす。語り尽くしたすぐ後に、目の前にいる芋虫について語り始める。だから、この話に、終わりはない。そして語る相手はご覧の通り、誰もいない。さあ今一度思い出せ。僕は誰からも必要とされていないってことを。

 

音は僕を笑わなかった。空も僕を笑わない。いつだって僕を笑うのは、人だ。

 

いつかなくなっていくのか。そうか、いつかなくなっていくのか。僕が人のことを好きになったときの感情も。あの時と同じようになくなっていくのか。僕が空を美しいと思ったことも。ああ、そうか。いつかなくなっていくのか。君のことを好きだった僕も、ジャズが好きだった僕も、全部、こんなふうに、なくなっていくんだ!