くうちゅうくらげ

-A Boys Named No.28-

ひねくれと迷い。

もうそろそろ気づかれてもおかしくないとは思いますが、僕は行動も思考回路もそのほかのほとんどなにもかもが鬱々としているので、人生というものをどうもポジティブに受け入れることができません。

仕事に行く前は「どうせまた今日も誰かに怒られるんだろうなぁ」と思うし、飲み会に女の子がいると「どうせまた嫌われるんだろうなぁ」と思うし、休みの日なんかは「そろそろ死ぬかなぁ」と思います。せめてオナニーしてる時間くらいはポジティブに生きたいものです。

 

今日は珍しく早起きをして、デスクでぼんやりとしていると、外からそれなりに大きめのハチが室内に入ってきました。そしてハチが僕の腕に止まりました。ここんとこ頭の中がコールドスリープ状態に入っているのもありますが「そんなに僕の腕が居心地良いかね、とりあえずここには誰もいないし、ハチさんがいいのなら僕の家で飼ってあげるよ、だけどそのかわりたくさん蜂蜜を作っておくれ、僕はそれで一儲けするからね、おーよしよし」などとハチに語りかけていると、猛烈な勢いで刺されました。

いてえ。尋常じゃなく痛いです。写真にあげて見せてあげたいくらい腫れましたが、一歩間違うとグロ画像になり得るので、自粛します。そんなわけでいたしかたなく病院に行くしかなくなりました。

 

とまあそんなこんなで病院に行くために鬱々とズボンのチャックを開けっ放しで家を出たわけですけど、それにしてもみなさん楽しそうですね。なんかむかつくほど楽しそうなので、鬱々な僕としてはなんとも云い難い気分になってきます。

 

人生そのものがサバイバルだと思っている僕には外で気を緩める余裕がありません。少しでも気を緩めると、美女のパンチラを見逃してしまうからではありません。まあそれも少しはありますが、少しでも気を緩めるとイヤホンから聴こえてくるthee michelle gun elephantばりに「せかいのおーわーりがぁ!そこでーまってーるとぉ!」と大声で叫んで服を脱いで走り回っても何の不思議はないからです。

 

僕は世の中にむかついています。なぜって、世の中はちっとも僕の思っている方向に物事が進まないからです。

たとえば本来ならば僕はレッドカーペットの上を絶世の美女と一緒に歩いたり、キャデラックでキューバ産の葉巻をふかしながら海岸線をドライブしたり、ビバリーヒルズのプール付きの豪邸でのんびり日焼けをしているはずの人生なのにも関わらず。実際は惑星から降りてきた猿のように背中を曲げて歩き、前から来る人はすべて僕を避けていき、スーパーの特売品は僕の前の人で売り切れ、メダルゲームですらも当たらないからです。

 

だから僕は散々外を歩くのはやめたほうがいいんじゃないかと自分に云い聞かせていますけれども、家にいたらいたでオナニーしかすることがないし、いざそのオナニーが終わったらいよいよ死ぬか寝るかしか選択肢がなくなるので、外に出ざるを得ないんです。

しかしまあここまで来るといよいよ僕の役目は終わったな、と切腹しようかと思わないでもないんですが、無駄にここまで生きてしまっているのでこれからも無駄に死ぬまで生きようという気もしないでもないです。

 

と、そんなクソの値打ちもないような考えを持ちながらとぼとぼ歩いていたら病院に向かっていたはずなのに、見知らぬ土地まで辿りついてしまいました。御年24歳にもなって、なにも考えずに歩いた挙げ句帰れなくなって死ぬという結末だけはなんとか避けたいものです。さてどうするか、と考えるや否や、携帯が鳴りました。

前にも少し書きましたが、僕はイケメンであるが故に携帯が滅多に鳴りませんので、携帯が鳴ると云うことは非常事態です。猿なみの反射神経で携帯を開くと、amazonが「身近にある死」という本を紹介してくれたようです。

 

無駄にひねくれている僕は誰かから「死ね!」と云われる度に「死ぬのはてめぇのほうだ!」と思ってしまう性格でもあるので、amazonに煽られた僕は「誰が死んでやるか!」と無駄に奮起し、更に道に迷いました。

仕方なくgoogleマップにお世話になって病院に行って帰ってきて今日の任務は終えたのだと満足していたら、だんだんと眠くなってきました。

 

もし誰かに今日はどんな日だったかと訊かれればいつも以上に無駄な日だったと云わざるを得ないでしょう。腕が痛いです。むねもいたいです。