くうちゅうくらげ

-A Boys Named No.28-

もういやだ、またあした。

結婚式で演奏してきました。いい加減、幸せを目の前で見るのもやめたいもんですが、結婚自体が幸せなのかとそうでもないと思っております。結婚式自体はなかなか幸せだと思いますが。

 

僕は結婚式に行きすぎています。「俺は何回結婚してるんだ」という錯覚を起こさせるほど行っているのですが、ああまだ僕は結婚したことがなかったです。アーメン。

 

結婚式なんかにあまり行ったことがない人っていうのもいると思いますが、演奏っていったって、みなさんが注目しながらスポットライトに当たって仰々しいものを弾くような役目ではありません。プールのときに何故か勃ったちんちんを女子が気にしないように、僕も気にされずに、みなさんがふつうに食事とかしてるときにBGMを流すような役目です。ただの人間オルゴールです。CDでやれよと思うかもしれないですが、ああいうのはCDじゃ雰囲気は出ないっぽいので、渋々知人の要望を受け入れてやってます。まあ暇だし。

 

前置きはまあいいです。今日はその式場にたまたまいた小さな男の子に「ピアノのおっさん」と呼ばれながらつきまとわれました。おっさんと呼ばずにお兄さんと呼んでほしいものですが、子供っていうのは本当に無邪気だと思いました。

 

野球少年が甲子園に憧れるようなものと同じように、小さな頃に憧れていた舞台が僕にもあります。それがほかでもない、結婚式場での演奏です。だけどこんな人間オルゴールではないです。僕が憧れたのは、亡き従姉妹のねえちゃんとの結婚式で「メイン」として演奏する舞台です。

 

だから僕はねえちゃんが聴いていると思って、今日も目を閉じながら演奏しましたよ。

 

「今日はなかなか上手くいったんじゃない?」

「知らない子供にも好かれちゃってさ」

「案外かっこよかったわよ」

「今度は私にも聴かせてね、アラベスク

 

またこの回想か。

おまえ何回目だ。

 

もう聴いてくれる人もいなくなったんだな。今更になって叶わない約束がもの凄く眩しいです。今日は誰かさんが好きだった雪の日だ。

 

今日の感傷おしまい。