くうちゅうくらげ

-A Boys Named No.28-

それはとても大事な時計でした。

喫茶店で仲良く話している男と女を見ていると、ああいうところに愛があるんだろうなって見えたりします。見えたりするんですが、実際にその男と僕が取って代わったとしても、その場なら僕にも愛が見えるのかって訊かれれば即答でNoと云えそうな気もするので、なんだか難しいもんです。下手したら、奥に一人で座りながら、ノートPCに何か書いている寂しく気持ち悪い男の方に、愛ってやつを見るのかもしれません。あ、それ僕です。話がややこしいですね。あ、このややこしい話をしてるのが僕です。

 

要は、僕には僕にしかない何かがあるはずなんです。彼には彼にしかない何かがあるように。だけどそれらは必要なんかではないです。不必要である理由は数え切れないほどあるのに、必要である理由は何ひとつ思いつかない。これって辛いことでしょうか。もし辛いことだと感じるのならば、僕は生まれてからずっと辛いです。悟ってください。

 

僕は今言葉を切り張りしてます。自分では結構核心に迫っているつもりなのに、その周りをうろうろしています。なんでそうしているかっていうと、核心に至ったら終わってしまうからです。なんか大事にしてたもんとか全部終わってしまいそうな気がするからです。それはやめたほうがいい気がします。僕のためにも僕の周りのいろんな人のためにも、僕はこれでいいような気がするんです。気がするだけです。

 

僕は前からずっと僕に関わった人は不幸な思いをしたんだろうなって思いが消えません。だから何ができるわけじゃないですし、だからどうなれるってわけでもない。他の人に何か云われても消えるわけじゃない。ご覧なさい、アレが男の、人の失敗作だよ、あんな風になっちゃだめだよって。

 

女のイロハと同じで、こうして書くことで自分を慰めているんです。あ、これはたぶん書かなくても良かったことですね。こういう細かいミスの繰り返しが、僕を生きづらくしてるんですよ。

 

君は「みんな同じだ」って云うけれど、僕には君みたいな人がほかにいるとは思えないってやつです。