くうちゅうくらげ

-A Boys Named No.28-

どこにあったんだろう。

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早起きして淹れた100℃の珈琲は気が付いた頃には外気に触れて冷たくなっていた。その間でぼくは、風船が舞う広場で誰かの背中について歩いたあの時のことを想いだしていた。古い町並みを投影するUFOを数えながら、砂の上に裸で寝ころぶような感覚。すべてが自由に感じられた時、ほんの少しの間だけ幸せの片鱗に触れた気がした。それらはすべて、暖かい日々の出来事だった。


スタートからエンドへと走り続ける鹿の群れを想像するような。前足がなくなったウォンバットの感情を表現するような。ぼくが自分から捨て去ってしまったものを想い出させるような。それは一種の視点から見れば、そこまで悪いものではないように思えるのだろう。


ぼくらが家に帰ったとき目にしたものは、向日葵の種を植えた場所の上に建った大きなビルだった。


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どうしてだろう。前は時間がないってずっと思っていた。今では時間が戻ればって思っている。戻ったところで、時間なんてないのに。問題は時間ではなく、用意された一瞬に、何かの決断をしなくてはならない一瞬に、しなくてはならないことを、しなくてはならないということ。それはつまり、してはならないことを、してはならないという意味でもある。その双方で失敗してしまったぼくはというと、また用意されるべき一瞬を待っている。長い年月をかけて。そしてまた失敗するんだ。きっとそうだ。雨の中で涙を流して、天気のせいにするんだ。傷を隠すように誰かを傷つけて、きみのせいにするんだ。これからもずっと。


そしてサイコロは転がって、振り出しに戻る。時間よ、戻れ。時間なんてないけれど。一瞬に戻れ。また選択は間違えるけれど。これは誰のせいなの?これはすべてぼくのせいなの?仮にぼくのせいだとしても、ぼくは全部きみのせいにする。今までだってそうしてきたから、これからだってそうするよ。これは頭で理解できているかどうかの問題じゃない。腹が減ったら何か食うのと同じように、きみがいたらきみのせいにする。振り出しに戻る。一瞬に戻る。間違えたという選択も一つは、ぼくがきみのせいにしたという間違い。


わかっているだろう。全部ぼくのせいだったんだ。


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きみが好きなこと、それは本当。本当って何だろう。本当ってそんなに大事?よくわからない。本当の嘘っていうのも存在するし、嘘が本当だったってことも有り得る。そうだとしたら、昨日と今日の間があるように、本当と嘘の間にも何かある。考えるのがめんどくさいから、今は考えないようにしよう。眠れなくなるから。明日もまた仕事にいかなくちゃならないから。考えないようにしよう。そうやってどれくらいのことを忘れたんだろう。どんなにがんばってもぼくは綺麗にはなれない。何度もペンキを塗り直して、また剥がれていく公園の遊具のように、何度も心にペンキを塗ってみた。ペンキ塗りたてだから、お願いだからぼくに触らないで。そのわりには目立つ色にしているね?何になりたかったの?


ぼくは変わりたい。たった一本の煙草がぼくの人生を左右した。それに気が付かずに進んでいった日々。時計はただの目印でしかない。飛行機に乗ったら、価値のなくなるもの。なんで忘れてしまったんだろう。あれだけ大事にしていたはずなのに。一番大事な言葉は、一番大事な瞬間に全く役に立たない。人生が辛いと云っていたいつかのきみに教えてあげる。本当に辛いのはここからなんだ。だけどここってどこだったんだろう。いつもそう云われてきて、辛いことだらけだ。


辛いことだらけだったのに、振り返ったら眩しすぎて、そしてまた辛くなるんだ。


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