くうちゅうくらげ

-A Boys Named No.28-

My Epitaph. #9

  • 3/1(Thursday)

・僕の仕事は夜勤なので、これを書くときは「仕事をした」よりも「仕事をしてきた」と書くのが正しいと気付いた。そうしないと時系列がずれてくるのだ。ということで、仕事をしてきた。月の最終日ということで、昨日までとは打って変わって忙しかった。つまり充実した時間が過ぎ、気が付いたら朝の10時という没頭ぶりだった。微笑ましい。気持ち悪い。

・帰宅時に君からメールが来た。君は最近「なぐってやる」とか「ふんづけてやる」とか、良く云う。かわいいと思うけどやめたほうが良いと思うぞ、と返した後に、「何してるの?」と来たので、「上海」と答えた。「なにそれ?」「パズルゲーム」「つまんなそう」僕はいいと思うんだけどな、上海。

・最近聞いたニュースでは、とある女性芸人が占い師だとか神だとかを信じて引きこもっているらしい。そんなことは僕が関与するところではまったくないが、せっかくなので他人に神など宿らないということだけは改めて云わせて戴こう。他人の神に頼るくらいならば黙って死ね!僕の神は僕だけだ!ざまあみろ!

・哀しみと苦しみのない世に招待されたら、声明文を書いてでも断固拒否しようと思った。つまり、僕はそれらを棄てない決意をしていたのである。その決意自体も総じて哀しいものではあるが、必ずやここに愛が還ってくるはずなのである。いや、“はず”というのはいささか傲慢が過ぎる。今は「そう信じる」とだけ云っておこう。

・「だからとりあえず」でコトを納めることが上手くなったと思った。そして、嘘を吐くのは極限まで下手になった。もしかしたら弱ってきているのかもしれないね。おやすみなさい。

  • 3/2(Friday)

・仕事をしてきた。忙しすぎて反吐が出そうになった。両生動物のクソをかき集めた値打ちしかないと思った。言葉など消えうせればいいと思った。が、しかし、深夜になると一点、一気にご機嫌になった。それもまた、両生動物のクソをかき集めた値打ちしかないと思った。だが今日は夜勤明けの休みだ。ゆっくり寝よう。

・そういえば昔「くすぐりエルモ」という奇怪なアイテムが流行っていたが、彼らはまだお店にいるのであろうか。今度トイザらスでものぞいてみよう。買わないよ。僕はピングーの方が好きなんですからね。

・昼に起きて“ピングー”を駅まで迎えに行った。天気は悪く「車を避けたら水溜りに入って靴が浸水」と云う君はご機嫌だった。だから、僕もご機嫌だった。金曜日は元来“僕の時間”だったのだけど、それが一瞬にして“僕たちの時間”に変化した。それがあまりにも滑稽なことだと気づいたのは今日だった。実に1ヶ月以上経ってからの感知である。不思議なものだ。

・ただひたすらに家でだらだらして過ごした。君にとあるパズルゲームをやらせてみた。ハマるだろうと思っていた。30秒でトイレから戻ってきたら、携帯は床にあり、君は漫画を持っていた。僕はいいと思うんだけどな、上海。

・どこからどう見てもこの関係は、僕の君に対する片思いと君の僕に対する片思いで構成されていることを確信した。現在のそれは、とても喜ばしいことなのだと思った。きっと其処にこそ、僕の望んでいた、まったく悪気のない世界が訪れるのでしょう。

・確かに1月という時期は自らの郷愁と恋人との邂逅ということで、あまりに生々流転しすぎて、未だにしどろもどろの頭は理解すら出来てないという状況に苛まれているのですが、これらの気持ちは果たして何かに飲み込まれているのだろうか。変わった。確かに変わった。その日で、色も形も景色もすべて変わったのです。そしてその変化を、現在の僕は喜ばしく思っているのです。

・僕のライフライン、また明日も会えるね。おやすみなさい。

  • 3/3(Saturday)

・休みだった。僕はお国なんてものに直接触れた記憶など一切ないのだが、どうもその見えないものが僕の出勤日数と時間帯にうるさくてね…。だからあの忌まわしい眼科にいくのだ。あの忌まわしい眼科にね…。というわけで、早めに起きたが、早すぎたので二度寝したら、今度は遅すぎる時間に起きた。忌まわしき眼科に行く時間がなくなり、さらに忌まわしくなった。

・“二度寝後の遅すぎる時間”に、突然ではなく、必然で君と会うことになった。2日連続で会うなんてあまりにも不健康すぎるが、まあ時には良いだろう。僕の休日は君と一緒に溶けていくのだ。駅から手を引っ張って、笑顔の綺麗な女の子を部屋に連れて来た。ああ、いいよね、水族館。来週は忙しいから、その次の週かな。でもそろそろディズニーランドにもいきたいな。どっちがいいだろう。やっぱりシャチのぬいぐるみが欲しいな。そういう、何処にでもありそうな話を完結させるまでに3時間。結果は僕の負け。そろそろ出かけよう。僕は腐っていると思っているあの街に、君は用事があるみたいだから。

・今日の僕は君に向けて“あえて”言葉にすることにしてみた。君は照れながらもなんだか嬉しそうだった。君の笑顔で四次元まで吹っ飛びそうになった。まさに“うちゅうくらげ”である。僕と君は互いに努力をしながら未来を見つけることを約束した。今日は本当に素晴らしい日だった。その瞬間、僕たちには永遠の愛などはいらないように思えた。なぜならば、この瞬間こそが永遠であるのだ。

・君を3番エアポートまで見送ってから、故郷を想う。友を想う。君を想う。僕を想う。それが僕のすべてだ。帰宅してピアノを弾いた。丸腰で優しさを信じるのはあまりに無防備過ぎるが、それでも、僕の人生を刺激してくれる人が確実にいる。彼らの日々にぜひとも光明がありますように、と願う。

・明日のことを考える。それこそ明日が今日より素晴らしいという因子が虚無なので、多少憂鬱になる。誰もが気付いていることではあるが、「明日」、それは僕にとって、残された日々の第一日目である。二度と戻らない時でもある。それを考えると、どこからどう見ても大事な1日であるにも関わらず、僕は明日を放棄したい。しかし、明日を放棄するということは、「未来」を放棄することに他ならない。今の僕には未来を放棄するほどの勇気もなければ、明日を受け入れるほどの強さもないのだと気付いた。つまり、明日起きるのにはとても勇気がいりそうだ。