くうちゅうくらげ

-A Boys Named No.28-

いもむしちゃんの野望 #1

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[We are losing it]

僕が宇宙についての妄想を始めた時、君は天井を見ながら携帯電話をいじっている。君の横顔が好きだ。いや、ここは、あえて、好きなのかもしれない、と云っておこう。僕は十数年間、数々の言葉で僕を傷つけてきた。今更反省しろと云われても、それはそれで難しいものだから、特に何も考えずに行こう。“これ”が止まるまで。“これ”が消えてしまうまで。

だから僕はいつでも誤魔化しているのさ。君の横顔が好きなの“かもしれない、ほんとうのことはわからない”そういう風に。これなら誰も傷つかないから。

僕が宇宙について妄想をしている時、僕が“可能性”についてを考える時、僕は思う。たとえば君が僕のほうにその手を伸ばしたのなら?僕は迷わずに連れていくだろう。それなら、少なくとも君のほうは傷つかないから。だけど君が知らないうちに僕は傷ついている。そう、君は知らないだろうけど、僕は日々傷ついている。せめてこれだけは話しておきたいと思う時、君は天井を見ながら携帯電話をいじっている。

大して良くも悪くもなかった少年時代を振り返ってみて、その後にここ数年のことを振り返ってみて、君がどんな風に思うのか。その中身を聴いてみたくて、話してみたくて、だから君に声をかけて、ほんとうに、純粋な気持ちで君に惹かれてみて、傷ついてみて。そう、僕はもう傷つくことなんて怖れていないよ。君が僕を気にしていようと、気にしてまいと、それとこれとは全く関係がないんだ。久々の感情にわくわくしているんだ、たったのそれだけなんだ。だけど僕には伝える方法がないから、僕には伝える必要がないから、僕はほんとうに生きているのかわからないから、僕が僕である必要はなかったはずだから、だからいつものようにここで。

僕が宇宙についての妄想を終えるとき、天井を見ながら携帯電話をいじっていた君はいなくなっていた。

[/We are losing it]

 

[Wake up My love]

いつかは君に、僕が君に対して思ったことを伝えてみたいと思うけど、それでもその手段は否応なく奪われてしまうんじゃないかってことも自覚している。いわゆる純真だとか、素直だとか、綺麗だとか、僕がそれを求めるには年を取りすぎているとわかっているからこそ。言葉は悪くない。人が悪いんだ。他人が悪くて、僕が悪いんだ。

君は君のことを何でも知っている。僕は僕のことを何でも知っている。そのつもりでいる。だから、僕は僕じゃないことはしゃべらないし、君は君以外のことをしゃべらなくていい。それらが衝突するときが、きっと一番綺麗だ。そして僕たち、いつかは愛し合うつもり。死ぬまで、愛し合っていくつもり。

その姿勢だけで十分だと思えるし、僕にとってはなにが嘘でなにが真実かなんてどうでもいい。ただ君が僕に伝える「ほんとうのこと」に興味がある。今まで流した涙と引き替えに、ほんのちょっとのチャンスをくれないか。僕が明日もちょっとだけでも生きたいと思えるように。

僕はいつでも考えているんだ。もしこの場所を離れて、二人でどこかにいけたら素敵だねってことを。車に乗って、飛行機に乗って、船に乗って、どこか遠くまで、これからのこともこれまでのこともなにも気にしないで。

もしどこか遠くまでいけて、そして二人で一緒に死ねるのなら、何の後悔も何の失敗も何の思い残しもなく、二人で一緒に死ねるのなら、二人で一緒に生きれるのなら、死ねたのなら、生きられたのなら、素敵だねって、考えているんだ。

現実が僕の夢に干渉する前に、嫌いなものに救われる前に、僕は君を連れて、早く僕の中から這いだして行きたいんだ。

[/Wake up My love]

 

[Such a brilliant star you are]

さあ、人生最大の後悔を始める準備はできているか。僕は僕にそう問いかけるけれど、まだ覚悟はできていない。準備ができていないわけではない。だってなにを云ったって、特に用意するものなんてないのだから。僕が引き替えにするのは明日、そして未来。だけど気にする必要はないよ。気にするのは僕じゃなくてほかの人だから。他の人は他の人で、僕じゃないから。君じゃないから。だから気にする必要なんてないんだよ。

夜中に君のことを考えていた。覚えていますか?僕がまだ小さかった頃、君を思っていた頃、僕が僕だった頃、僕がほかの誰かじゃなかった頃。距離すらなかった頃、振り向けば君がいた頃。僕は何度も思った。もしこの夜中に、この夜中の深部で数分でも、僕と同じことを君が考えていたらいいな、って。君が僕のことを考えていたらいいなって。それらを訊くチャンスは永遠に失われてしまったから、もう訊くことはできないけれど、僕は信じてる。たぶん、きっと。僕と同じことを君は考えていてくれたんだねって。

夕暮れ時にプラネタリウムに行きたがった君を連れて、二人で手を繋いで生きることについて探したよ。僕がずっと探していたもの。君がずっと探さなくてはならなかったもの。とても大事なもの。

君には秘密にしていたことがある。僕は作りモノのたくさんの星を見て、その帰りに本当の星を見て、僕はあれがほんとうの星なのかと疑った。そして僕を見て、君を見て、僕がほんとうにほんとうの僕なのか、君がほんとうにほんとうの君なのかを疑った。その夜に僕はなにがほんとうでなにがうそなのかわからなくなった。

突然、笑う君の顔を鮮明に思い出したよ。もの凄く近距離にそれらを感じたよ。

[/Such a brilliant star you are]

 

[All I wanted was you]

今日の僕の報告としてあげておかなきゃならないのは、相変わらずひどかったってことくらいだ。長くは続けないだろう仕事を朝から晩までやって、夜中の楽しみもやる気がなくなって放棄してしまった。今日は君がいなくて良かったと思う。些細なことで傷つけてしまうかもしれないから。だけど実際にここには僕しかいないし、その僕ときたらほんとうの僕かどうかすらもわからないからどうでもいいよ。この疲れた身体は、この疲れ果ててなにも感じられない心は、明日には知らない誰かに渡してしまおう。

今僕が思うのは、このほとんど終わった夢の中で感じる視線と、燃えて残ったゴミのこと。誰かが何か云ってる?僕はそんなこと気にしない。生まれた時から誰の言葉も気にしていないように錯覚している。だけど何故か今日は無性にこのことを話したくなったから、パソコンと話をいているだけに過ぎない。だってここには僕しかいないからね。僕がいるのかどうかもわからないけど。

ほかの人誰もが思ってはいるけど、口に出さないようなことを云うよ。君が欲しい。身体がもらえないのなら心が欲しい。心がもらえないのなら魂が欲しい。ただ無性に君が欲しいだけなんだ!って。永遠にも思える寒さを感じてはいるけれど、僕は生きながら夢を見ているらしい。夢を見るのは生きているかららしい。

もうそろそろ真実が燃えるよ。

[/All I wanted was you]

 

[I wont hear anything that you say to me]

もし世界が終わったとしても、経済が破綻したとしても戦争が起きたとしても、とても大事な言葉を云い忘れたとしても、寝たとしても、起きたとしても、生きていても死んでいても変わらないことがある。君は二度と家には帰ってこない。それは変わらない真実。

だから僕は服装を整えて、家の掃除をして、高層ビルの一番上から飛び降りる真似をして、警報が鳴って、管理人に説教をされて帰る途中。あの空に君の笑顔が見えたよ、後少しなんだ!僕は、僕は云う「僕はもう二度としないよ、絶対に」何かほかに謡うことはあったかな?

僕は何かわからないものと戦う。そして、誰かが僕に「何と戦っているの?」という。僕は答える。「言葉と哀しみと戦っているんだよ」「嘘と真実と戦っているんだよ」「僕と君と戦っているんだよ」「で?僕はどこで、君は誰?」「僕は、言葉、と、哀しみ、と戦っているんだよ」「僕は、哀しみと、哀しみを感じない人と戦っているんだよ」「僕は、言葉と、哀しみを感じない愚かな人と戦っているんだよ」「僕は、毎日が、楽しい人と、戦っているんだ!」

[/I wont hear anything that you say to me]

 

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