くうちゅうくらげ

-A Boys Named No.28-

すぴっと。

某デリxルで女を送迎するという闇の中の闇みたいなバイトをはじめてだいたい2ヶ月経過します。この間、事務所で待機していると人気2位くらいのM氏が指名されたので新宿区某場所から中野区某場所へ。


いろいろと見ちゃいけないものを見ちゃう気がするので基本的に僕は自分から話題を振ったりしないのですが、その日は酔っていたのかシャブでもやってんのかしらんけど、やたらとハイテンションなMが自分の過去について語り始めました。


「あたし、小さいころはふつうの目立たない女の子だったのよ」「あたし、中学生のころに母親に捨てられたのよ」「あたし、高校生のころはおとうさんの性の道具だったのよ」「結局、失うものがなくなっちゃえば人生ってこんなもんなのね」


オゥジーザス、世界は僕が知らないうちにこんなに腐敗してしまったのです…。などと心の中で考えながら「はあ、そうですか」などと相槌を打ちながら黙々と運転だけに集中し、某場所に到着。


「さっきの客はやたらと本番をしたがるからいやなのよ、そのぶんこういうはじめての客は緊張するわね」


失うものがなくなっても緊張ってするものなんだ…。そうして某ホテルへ姿を消していったMを見送ってから、終わるまで近くのコンビニで時間をつぶすことに。
コンビニでは、髭をはやした金髪の悪そうなにいちゃんが店員に何か文句を云っていました。そして文句を云い終わると外にでて仲間たちとケラケラ笑っていました。


そんな奴らの気持ちを想像しながら時間を潰し、再び某ホテルの近隣で待っていると、すっかり冷めきったMが車に乗ってきました。帰り道、Mの口から出てくるのは先ほどの客の文句ばかりでした。


なんだか無性に、早く帰りたい気持ちになった夜明けです。